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「ひどいよ、シェフィ~……」
見上げた天井が微かに滲む。
確かにちょっと驚かせようとか、多少の下心とか、無かったわけじゃないけれど。
ああもう、そんなに一生懸命に謝らないでよ。
ますます拗ねたくなるだろう。
『ここは僕の部屋で僕のベッドで君は勝手に寝ていたけれどそれでも僕は何もしていない』
おはよう、シェフィ!!
照れ隠しにしては、ちょっと力強すぎやしないかな!?
『独り占めするなら、一つだけにしておけってさ』
看病疲れた彼の“主治医”は彼のベッドで静かに寝息を立てていた。
戦手柄の一つや二つ、くれてやればいいか――
穏やかな寝顔を見つめ男は満足げに微笑む。この特等席を独り占め出来るのは自分以外には居ないのだ。
「知ってるんですよ。無理はしないなんて結局口先だけの約束だって」
溜め息と共に空になったベッドへ身を預ける。たぐり寄せた毛布にはまだ彼の匂いが残っていた。汗と香油の混じり合った香りに不思議と不快感は無く気持ちは落ち着いてくる。
ちゃんと無事に戻ってね――
微睡みの中、小さく呟いた。
「たまには他の連中に手柄を譲れ。“何でも”一人で占められると隊の士気が下がる」
「特に、若い連中のな」
言葉にからかいを感じ、騎士は友を睨み付けた。
「君らしくない冗談だ」
「当然だ。貴様の真似をしたのだから」
「文句があるならさっさと怪我を治せ。あまり“主治医殿”に心配をかけるなよ」
『ずるい』
可愛い顔が、台無しだ――
ずるいずるいずるいずるい!
そんなに笑うなんて!!
本当に悪いことをしたと反省していたのに。
本気で怒っているのだと思っていたのに。
文句を沢山言いたいけれど、貴方にそんな風に笑われたら私はもう何も言えなくなってしまうのです。
本当に、ずるい人。
「……ごめんなさい」
別に本気で腹を立てたりなんてしない。心配してくれていたのに、身勝手に振る舞ったのは自分の方なのだ。とは言え堅い杖で何度も叩かれるのもご免だった。
だから少しだけ、怒った振りだけ。
これはお返しだと、彼女の頬を両手で強く挟む。
『この顔見てなんとも思わない?』
「これ以上殴られたら僕、本当に不細工になっちゃうよ」
言葉遣いは柔らかくとも、声の調子には咎める語気の強さがあった。思わずはっと息を飲み、顔を上げる。彼が苛立ちを自分へ向けたのは初めてだった。
「君だって嫌だろう? 可愛い顔を台無しにされたら」