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楠羽毛さんのイラストまとめ


SF、とか…?
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 しばらくしてエマがやってくると、エミーはすぐに立ち上がって、にっこりと笑った。エマは、どことなく暗い顔をして、朱里の胸元に手をあてて、船外服の前をそっととじた。



 ぶかぶかの宇宙服をきて、鞄をせおって、はしごを降りる。
「……あの、」

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 朱里は不安になって、船外服の胸元を右手で握ったまま、よろよろとエミーに近づいた。
「ちょっと!」
 耳元で叫んでも、反応はない。
 どきんと、心臓が大きく跳ねた。
 ぞっとする。
 おもわず手を出す。エミーの、かたい頬にふれる。冷たい。

 がたん、

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 サイズが合わないので、手袋は指の先が余ってしまった。袖をまくろうと思ったが、うまくいかない。脚も丈が余っていて、歩きにくいが、仕方がない。
 切れ目を留めようとして、気づく。チャックがない。ただの、なめらかな切れ目だ。
「これ、どうやって……

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平行世界転送機。……この機械で、平行世界にわたしと同じ原子構造を再構築する。何人もの私が、いま、それぞれの時空で重要な任務を果たしている。……私自身がいる世界はとっくに平和で、何もやることがない。ただ、見ているだけ。がんばれ、私たち。

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 足下の、宇宙服をみる。

 むかし、テレビや写真で見たことのある宇宙服とは、だいぶ様子がちがう。一見したところ、グレーの生地にオレンジの線が入った、普通の作業着のようだ。ただ、長靴風のブーツと手袋は、作業着と一体化して、切れ目なくつながってい

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美人の魔術師が呪文を書いた札を貼ると、ペンが勝手に動き出す。「これを貼れば、どんなものでも思いのまま」札を買った俺は、魔術師の額に手をのばし、ペタリ。魔術師はすぐに人形になって倒れてしまった。…よく見ると、背中に、もう一枚の札が。「残念でした!」奥の部屋から、本人が。

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 この旅がはじまったときに、宇宙船デイジーベルで支給された下着。ただの布みたいに見えるが、なぜか、まったく汚れがつかない。
 鞄のポケットから布を出して、眼鏡を、かるく拭く。これがなければ、何も見えない。
 木でできた、可動部分のないフレームと

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 エマはいない。エミーが、倉庫の入口ちかくに立って、こちらをじっと見ている。……いや、見ている、のだろうか? とにかく、目をあけてこちらを向いているのはたしかだ。
 飾り鎖をはずして、袖のないトップスを脱ぐ。ショートパンツをおろすと、ざらりと小

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 カセイジンに相談したいな、と思う。
 いつも、余計なことを言うばかりで、役に立ったことなどないのだが。



 朱里が着ているのは、砂漠の国でパ=ルリという女にもらった服だ。宝石と飾り鎖と、腰のまわりに広がった薄布が、動くとふんわりと揺れて、そ

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「加速?」
「宇宙船に速度を与えるの」
「それは、……わかるけど。」
「今回の実験は、2つの目的を兼ねていて。……ひとつは、新開発のエンジンの試験。もうひとつは、加速そのもの」
「加速、……そのもの?」
「物体が、光速に近い速度で運動したとき、どう

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