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「なんだよ。めずらしーか?」
あっけらかんと、彼女は言った。
右は白磁みたいに透きとおる肌。
左は焦げた琥珀みたいに深い色。
体はフツーで、でも左右で違う世界を生きてきたみたいな。
きれいだなんて言ったら、きっと鼻で笑われる。
でも目が離せなかった。
こんな存在、ほかにいない。
かくれんぼ。
押入れの奥、湿った布団のにおいと、日だまりのぬるさ。
少女は足で、私の出入り口をふさぐ。
「ここ、私の場所なんですけど? なんでいるんですかぁ?」
狭くてやわらかい、子供の匂いが加わった、小さな秘密の国。
見えない目で、世界を感じている女の子がいます。
花の香り、茎の手触り、指先に伝わる形——彼女はそのすべてを、心のなかで「見る」ことができる子。
手のなかにあるのは、青いバラ。
本当の色は、彼女にはわかりません。けれど彼女のなかでは、それはきっと、誰よりもきれいな青。
シアには、腕がない。
だから、足をまっすぐ――俺のほうへ伸ばしてきた。
水の中、重力のない世界で、彼女の髪がゆれる。
まるで、その足が「触れようとしてくれている」みたいで。
俺はただ、目をそらせずにいた。
この胸の奥が、きゅっと小さく痛んで。
――ああ、好きだって、また思ってた。
「おふろ、せーので入ったら、こんなんなりました」って。
笑ってる子も、すねてる子も、くっついてる子も、
みんなわたしで、みんなわたしじゃない。
ぬるま湯のなかで、名前を呼び合う夜。
今日のこと、きっと誰かが忘れても
誰かが覚えてるから、それでいいのだと思った。
腕がないこの体で、バランスをとるのは、ちょっとむずかしい。
だけど、背中のまんなかをまっすぐに通るこの背骨だけは、いつだって私の味方。
ぐらついても、ぶれても、ここにちゃんと「私」があるって、教えてくれる。
今日はうまく立てた気がする。だからちょっと、うれしい。
水ん中に鉄棒立てて、逆さまになってみた!
ぐるって回ったら空も海もひっくり返っちゃって、ちょー気持ちいい!
ふたりで一緒にぶらさがって、ばしゃばしゃして、笑ってるだけ。
むずかしいことはよくわかんないけど、
いまが楽しいってだけで、なんかもう勝った気がするんだよね〜。