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朝の光が差しこむ白い部屋、彼女はベッドから足を下ろそうとしていた。
ぐしゃりとした寝癖まじりの髪に、鮮やかな紫がところどころ揺れている。
何も言わず、ただ足をこちらに向けて、柔らかなままに。
爪に塗られた紫も、どこか彼女らしくて、胸がつまる。
指先のあたたかさまで、届きそうだった。
彼女は今日も片足で立っていた。
少しふらついてそれでもまっすぐだった。
風に揺れる髪に混じった色彩が、夕暮れの光をすこしだけはね返して、胸がきゅっとした。
強がりにも見えて、祈りのようにも見えて。
声をかけたくても、言葉が出なかった。
ただ、願っていた。どうかその心が折れないようにと
あいつ、今日もあの笑顔でポーズ決めてた。腕がないことなんて、まるで気にしてないみたいに、むしろ足で全部やってのける。その姿があまりに自然で、こっちのほうがドキッとするくらい。白シャツが水で張りついても、堂々としてて……たぶん、ああいうのを「強さ」って言うんだろうな。
私、今この瞬間がいちばん好き。双子の背中にしがみついて、あったかさを感じてる。みんなで笑って、水はねて、ちょっとくらい転びそうでも平気。
ぬるいお湯と、笑い声と、友だちの肌のぬくもり。このまま時間が止まればいいのにな。
「なんだよ。めずらしーか?」
あっけらかんと、彼女は言った。
右は白磁みたいに透きとおる肌。
左は焦げた琥珀みたいに深い色。
体はフツーで、でも左右で違う世界を生きてきたみたいな。
きれいだなんて言ったら、きっと鼻で笑われる。
でも目が離せなかった。
こんな存在、ほかにいない。
かくれんぼ。
押入れの奥、湿った布団のにおいと、日だまりのぬるさ。
少女は足で、私の出入り口をふさぐ。
「ここ、私の場所なんですけど? なんでいるんですかぁ?」
狭くてやわらかい、子供の匂いが加わった、小さな秘密の国。
見えない目で、世界を感じている女の子がいます。
花の香り、茎の手触り、指先に伝わる形——彼女はそのすべてを、心のなかで「見る」ことができる子。
手のなかにあるのは、青いバラ。
本当の色は、彼女にはわかりません。けれど彼女のなかでは、それはきっと、誰よりもきれいな青。
シアには、腕がない。
だから、足をまっすぐ――俺のほうへ伸ばしてきた。
水の中、重力のない世界で、彼女の髪がゆれる。
まるで、その足が「触れようとしてくれている」みたいで。
俺はただ、目をそらせずにいた。
この胸の奥が、きゅっと小さく痛んで。
――ああ、好きだって、また思ってた。