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ウィリアム・ワイラー監督作、西部の男 (1940)を見る。牛飼いと農場入植者の争いを巡り、一人の流れ者が悪徳判事ロイ・ビーンと対峙する。ウォルター・ブレナン扮する頑固で抜目なく独善的だが憎めない悪役キャラの造形がとにかく秀逸。お陰で物語の根幹が霞みがちで、ヒーローもちと困り顔に見える。
ゴードン・ダグラス監督作、Saps at Sea (1940)を見る。警笛工場の騒音でちとイカれ気味になったハーディは、大ボケのローレルを従えて船上の療養に出かけるのだが。60分弱と短めだが、分刻みで様々なギャグが連打される非常に密度の濃い作品。教訓や哀愁なんぞどこ吹く風、清々しいほどのナンセンス。
ニック・グラインド監督作、冷凍人間甦える (1940)を見る。冷凍医療の研究者が事故による凍結状態から10年後に復活、研究の完成を見るため殺人さえ厭わぬ精神状態に。怪しい科学考証に思わずニンマリのSFホラーで、低予算を逆手に取った地下の密室劇が主演ボリス・カーロフの巧さもあって中々効果的。
アンリ・ドコワン監督作、Battement de coeur (1940)を見る。教護院を逃げ出した女がスリの親玉に拾われるが、初仕事のヘマが思いも寄らない世界の扉を開く。前半のスパルタ式スリ学校がいかにも仏風の可笑しさで、この線で押して欲しかったが、後半の階級間格差のロマンスもまた欧州特有の味で好し。
追悼 田中邦衛ということで、勅使河原宏監督作、おとし穴 (1962)を見る。子連れの炭坑夫が謎の男に刺殺されるが、それは炭坑の労働組合を狙った陰謀の序章だった。いかにも安部公房らしい人を食った物語で、無力な幽霊たちが人々の断絶を象徴する。田中邦衛氏は不気味な殺し屋役で一番の儲け役。RIP。
エルンスト・ルビッチ監督作、ニノチカ (1939)を見る。極秘任務でソ連からパリへ派遣されたゴリゴリの共産主義女性が、西欧世界の代表のような伯爵と恋に落ちてしまう。余人ならば“恋に骨抜きの女”で終わる役を、流石のガルボは硬軟使い分けた演技で内面ある人間として表現。“ガルボ笑う”にニンマリ。
ジョージ・スティーヴンス監督作、ガンガ・ディン (1939)を見る。印度派遣軍の3人の軍曹と雑用係のガンガ・ディンは、カルト教団の武装蜂起を阻止できるのか。ラドヤード・キップリングの詩を元にした聖林製の冒険活劇。コメディ・スペクタクルともに快調だが、英国風は醸せず全篇西部劇調の仕上がり。
アンソニー・アスキス&レスリー・ハワード共同監督作、ピグマリオン (1938)を見る。音声学の権威が場末の花売娘を上流階級婦人に仕立て上げる賭をするのだが。バーナード・ショーの筆による台詞の見事さは舌を巻くほどだが、ちと結末がしっくりとせず、案の定、原作者の意に染まぬ改変があった模様。
ジョン・G・ブライストーン監督作、極楽オペレッタ (1938)を見る。鼠取り器で大儲けと、チーズの多い国=スイスへやって来たローレル&ハーディが巻き起こす大騒動。製作者ハル・ローチが一粒で二度おいしいと目論んだ名物コンビのドタバタ劇とミュージカルのハイブリッドは残念ながら少々分裂気味か。
茂木健一郎著「クオリア入門―心が脳を感じるとき」読了。我々の五感が心の中に醸し出す独特な質感=クオリアを糸口に、脳という物理的実体に心が宿る機序を考察する。科学的な細部には立ち入らないため、心を巡る哲学的論考という趣きが強いが、著者自身の熱意が伝わる議論は刺激的かつ説得力がある。