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立ち止まって小枝の折れた音や衣擦れや息づかいの音が消えるとほんとうの沈黙がやって来ました。沈黙はおりるのではなく、背中から追いついてくるんです。
「かか」宇佐美りん
「普通の人ならそれでいいかもしれません。けれど先生は医者でしょ。それなら、そのつらさを受け止めないといけないんです。自分にも救えない人がいるっていう事実と向き合わないといけないんですよ」
「天久鷹央の推理カルテⅡ:ファントムの病棟」知念実希人
「私に任せておけって」
その言葉を聞いた瞬間、背中に重くのしかかっていたものが消えたような気がした。この人が「任せておけ」と言ったのだ。僕はただ鷹央の背中を見守っていればいい。
「天久鷹央の推理カルテ」知念実希人
「私たちは皆、絢子さまの存在を常に思いながら生きてきましたけど、それでも、同じ時間をあれ以上過ごすことはできなかった。想い人や、大事な人たちと、同じ時間に存在できるということは、どれくらい尊いことか」
「ツナグ 想い人の心得」辻村深月
「思い出に、囚われてはいけないわ。それはおまえを縛り付けて、同時に前へ進ませることもするのでしょう。けれど、いつまでも囚われ続けていたら、それは呪いになってしまう」
「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼
いつだって、そうなんだ。誰かと触れ合うのに、本当は理由なんていらない。こうして、少しずつでも、暗闇の中を探っていくしかない。そうして距離を近づけていくしかないんだ。
「マツリカ・マハリタ」相沢沙呼
「明日からの自分が、もう涙を流さないでいいように、小説を読むんだ。ページを捲ることで、生きるために必要な養分をそこから得ていく。もし、物語を読んで涙を流すことがあっても、それは切なさや、やるせなさからくるものじゃなくて、この先ずっと、この胸に刻まれる温かな感情であってほしい……」
「ご主人の不安は、なくなるものではない。我々のなすべきことは、不安がなくなるまで漫然と待つことではなく、不安を抱えるご主人に向かって、"それでも大丈夫なのだ“と告げることだ。どれほど不安でも、"我々が全力で支えるから心配するな”と」
「新章 神様のカルテ」夏川草介
欲情で発光する女性の姿の美しさは、水槽の外に第三者として身を置く者の眼にしか捉えられないものなのだと思うのだ。きみがアキヤマさんに抱かれているとき、ぼくはまさに水槽の外にいた。それゆえにきみの持つすばらしい美しさとその豊かな魅力をぼくは発見したのだ。
「水槽の中の女」勝目梓
人はひとりでは生きていけない。なんて言うけど、誰かと手を繋いでいたら転んでしまうときだってあるんだと知った。
ためらいなく繋いだ手を離せるように、隣を歩いている人を信じる。自分の足でしっかり立つ。
そのことを、忘れないでいよう。
「やわらかい砂のうえ」寺地はるな