『天使と悪魔のシネマ』を読んだ。
死を題材にした連作短編集。
フラットな視点と文章で、喪失気分とエモをたっぷり味わえる。
死者が超常的な力によって、残された人や自分の人生の痕跡に触れる作品。こういうのって死神モノって呼んでいいのかな。既視感というか、類型がいろいろ思い浮かぶ。
近年で体形を扱った作品は、YAだと『恋するぷにちゃん』『秘密のノート』とかがありますね。これらはボディポジティブというか、身体性を否定せずにアイデンティティを獲得する話なんですけど、『ファットガール』において肉体は”ままならぬ他者”に近く、巻頭のアトウッドの題辞にもそれは現れています
『ボーダレス・ケアラー』を読んだ。
祖母の面倒を見ると同時に、生者と死者の間にいる者たちのケアをすることになった海斗の物語。
介護という言葉の印象よりはラフなニュアンスで、作品全体にも軽めの空気が漂っています。この重くなりすぎてないのが特徴と言えば特徴で、読後感はサラっとしたもの
『放課後オンライン』を読んだ。
中学生の悩み討論、その回答者の日常、作者（のアバター）からの視点、と三層に別れた構造になっている。そのため、感情的な極論、データを元にした対応、現実的な着地が同居しており、この辺り長いこと悩み相談をやってきた作者の工夫が見える。
左開きの横書き。
『ぜったいバレちゃいけません!!! 2』を読んだ。
「熱量の多寡で判断する是非」「モチベーションの維持問題」が、わかりやすく物語に組み込まれています。
これにより、自然体で困難に取り組めるかすみと、自らの弱さを隠すため過度に意識高く振舞う叶芽がよい対比になっています。演劇あるあるだ。
『けんか餅』を読んだ。
第2回フレーベル館ものがたり新人賞優秀賞受賞作。
菓子屋の奉公人・豆吉がとりなす人情噺。
作者は時代物の創作を得意としており、江戸っ子の気風のいいセリフや生き生きとした人物造型は、新人離れした完成度がある。
シリーズ化が決定済みで、今後の展開も楽しみ。
『夏のカルテット』を読んだ。
『みつきの雪』の眞島めいりの新作。
バラバラの四人が合唱を通し、創作の喜びを知っていく物語。周囲の好奇心の残酷さにもふれており、その上でどう自分の答えを出していくかも問うている。
作者のシーンの切り取りの上手さ、情景を的確に言葉にする描写力の高さは健在
『れんこちゃんのさがしもの 』を読んだ。
戸森しるこ初の幼年童話。
煮物になるのを嫌がり、突然転がりだした蓮根のれんこちゃん。くるくる変わっていく状況が想像力を刺激し、飽きさせません（半分だけレモンになる蓮根って何…）。
アイデンティティに関するテーマを、童話的にまとめる手腕も見事
ヒョーゴノスケ版『ももたろう』『かぐやひめ』を読んだ。
温かみとスケール感を両立させた作品。
本を縦にして上下に伸びた構図を見せてくるなど、工夫と遊び心も富んでいます。
物語はややアレンジあり（かぐやひめは不死の薬が出てこず、ももたろうは村が鬼に略奪され、それを取り返すという流れ）