掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「また振られた」。幼なじみがため息ついた。黙っていれば美少女のに、惚れっぽくて詰めが甘い。結局、17歳の今になるまで、彼氏ができたためしがない。慰めるのは別にいいけど、どこがマズいか察したら? 「それはあんたのほうだよ」。どういう意味さ? 「そろそろ察してくれてもいいんじゃない?」

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制服姿の美少女が笑ってる。机の奥から古い写真が見つかった。「10年前だ。懐かしいね」。妻が横から目を細める。片思いの彼女の写真がほしくて、部活の後輩に撮ってもらった1枚だ。そのやり取りがきっかけで、僕のその後は大きく変わる。「大好きだったもんね、姉のこと」。かつての後輩が微笑んだ。

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英語が苦手で困ってる。「教えてあげようか?」。ぼやいていると才色兼備のクラスメートに声をかけられた。以来、放課後の図書室で毎日彼女に英語を習う。何でここまでしてくれるんだ? 「あなたも教えてくれたじゃない」。うん? 俺、何か教えたことあったっけ。「あるよ。誰かを好きになる気持ち」

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「健康には注意しなきゃね」。結婚半年の妻が唐突に言い出した。「計画的にお金もためて、もう少し広めの家に住まないと」。大らかさが取柄の妻が、最近なんだかせわしない。もしかしたら月一回のアノ日とか? 「違うよ」。彼女ははにかみ頬を染める。ごめん。だったらなんだ? 「アレが来ないんだ」

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「今日デートなんだよね? 俺も彼女と会ってくる」。ベッドを抜け出し彼が笑った。私は頷き笑顔で見送る。お互いに体だけ。そう約束した関係はもう半年も続いてる。彼には同じ大学に一つ下の彼女がいるらしい。割り切ったはずだけど、嫉妬で胸が痛くなる。嘘つきの私は泣きながら今日の予定を考える。

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「27歳でお互い独身なら一緒になろう」。高校時代、同級生にそう言われた。大卒後、彼女はすぐに結婚し、僕は27歳の今も独り身だ。その夜、彼女が荷物を抱えて現れた。結婚後、夫はDV男に豹変し、やっと籍を抜いたという。うちに置くのはいいけれど、今日何の日だか分かってる? 「私の27歳の誕生日」

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初めて2人で出かけた温泉旅行。宿帳に、彼が自分の氏名と私の名だけを書き入れた。「旅館の人に詮索されるの面倒だ。新婚の設定でいいんじゃない?」。さらりと言われ、照れ臭さが一層募る。赤面しながら俯いてると、私を抱き寄せ彼が囁く。「しばらくしたら、この先ずっとこういう氏名になるんだし」

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想いを言えないまま、3年生は自由登校になった。先輩は卒業後、東京の大学に進学する。もう少しだけ顔が見たかった。3学期の試験を終え、今日からカフェのバイトに復帰する。更衣室を出たところで、名前を呼ばれた。「俺も始めた。よろしくな」。1か月半の延長戦。私はシフトを増やすと心に決める。

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同窓会の連絡で元カノに電話した。大学まで交際し、些細な喧嘩で恋は終わった。未練があるのに勇気はなく、長く音信不通が続いていた。今日、久々の電話で彼女の結婚を知らされる。予想以上に打ちのめされ、通話を終えてうなだれた。「なぜ泣いてるの?」。きょとんとした表情で3歳の娘に尋ねられる。

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「見栄のため手作りチョコを自作した!?」
「……えぐるな、黒歴史だ」
「いつのバレンタインよ?」
「2年前の中3の時」
「あ! 私にチラッと見せたよね?」
「幼なじみにモテないと思われるのが癪で」
「あれかー。私も黒歴史だ」
「なんでだよ?」
「あんたに手作りチョコ渡そうとして諦めたのよ」

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