掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「みっともないからやめなさい」。バレンタインまで1週間。辺り構わずチョコがほしいと口にしてると、クラスの女子にたしなめられた。中学以来の腐れ縁。わかったよ……。でもゼロってのは惨めだから、お前、義理チョコ一つぐらいは恵んでな。「あげないよ」。え? 「義理チョコなんて、あげないよ」

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保健室で横になる。職員会議で先生が退室したすぐ後に、先輩がやってきた。体育でどこかぶつけたらしい。「どうした?」。自分で湿布を貼った後、私に気づく。少し熱が、と答えると、そっとおでこに触れられた。「微熱じゃないぞ。顔も赤いし」。先輩、手どけてください。本当に微熱じゃなくなります。

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互いに高校生だった3年前、私は兄と道を踏み外した。いけないと思いつつ、想いを断てない。大学入学後、兄は実家を離れ、彼女を作った。兄の決意は伝わった。でも切なくて、涙が止まらない。その晩、3か月ぶりにLINEが届く。「振られたよ」。涙を拭い、兄のもとへと急ぐ。私は決めた。地獄に落ちよう。

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「あなたの想いが信じられない」。彼女が大学近くの1DKを出て行った。2人とも今のままだと駄目になる。そう思い、無理して始めた同棲は、3か月しか続かなかった。封印した気持ちが滲んだのだろうか。うなだれる僕を背後から優しい手が抱き締める。「もういいよ。2人して地獄に落ちよう、お兄ちゃん」

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長い髪をバッサリ切った。もう片思いはやめにしよう。登校すると、みんながこっちをチラチラ見ている。「何かあったの?」。彼が声をかけてきた。今まで一度もなかったことだ。「長髪でお嬢様みたいで近寄りがたく……」と頭をかく。中身は全然違うんだけどな。よし決めた。片思いをやめるのやめよう。

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「寒ぃ」
「学校帰り、ピザまんでも買っていこうよ」
「お前、元幼なじみとはいえ、ロマンがないな」
「あんたがロマン! 腹が痛いわ」
「お前だけど彼女持ちになったしな」
「お前だけど、は余計だね」
「もっと安上がりなぬくもりあるだろ」
「えっ……人肌とか……?」
「肉まんのほうが10円安い」

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彼がクラスメートの美少女と映画に行った。偶然知って抗議する。「お前は単なる幼なじみ。しかもアニメなんて興味ないだろ」。彼女の趣味は、もちろん知ってる。「何だよ。焼きもちか?」。戸惑いつつも笑顔の彼に、その通りだよと内心毒づく。言えないけれど、ずっと好きでいるんだぞ。彼女のことが。

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後輩の美少女に告白される。幼なじみに相談し、応援されてつき合い始めた。デートで行った水族館。「あいつもイルカ好きなんだ」。カフェでは「苺パフェ、あいつと好物同じだね」。1か月後、後輩に別れを切り出される。私じゃない人好きなんですね。困惑し、「誰のことだ?」と幼なじみに訊いてみる。

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彼の恋心には気づいていた。会社の後輩。素直で可愛く仕事もできる。社内では内緒の恋人と、私は春に結婚する。バツイチのその人は、私と彼の所属長。間近になって伝えれば、彼を傷つけ仕事に支障が出るかもしれない。次の休日、一足先に打ち明けよう。弟みたいに大事な彼への、せめてもの誠意として。

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会社の憧れの先輩に誘われた。僕は二つ返事でOKする。雑貨店や菓子店……。休日にあちこち巡り、お茶をする。「センスが良く口が堅い君がいて、私は幸せ者だ」。先輩が微笑んだ。誰にも言いませんよ、このデート。「まだ内緒だけど春に課長と結婚するの。引き出物の下見につきあってくれてありがとう」

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