掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)。リンクは固定ツイートご参照。原案の縦読み漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)も配信中。
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高校の部活終わりは一緒に帰る。誘って何度かお茶もした。私だけ、好きがどんどん募っていく。耐え切れず、秘めた想いを打ち明けた。「えっ……!」。先輩が絶句している。あ、やっぱ取り消します。つきあってもらえなくても、今で十分満足ですから。「……まだ俺たち、先輩と後輩だけの関係なんだ?」

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夫は絶対渡さない――。心を病んだ妻は言った。私は看護師として、半年前から家まで通いケアしてる。私との関係を疑ってるのだ。妄想ですよと微笑んで、服薬させた。「寝た?」と尋ねる彼にキスされる。「喘ぐなよ。妻が起きる」。平気。そろそろ永遠の眠りにつきます。睡眠薬に内緒で微毒も混ぜてます。

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妻が消えて7年経った。失踪宣告が認められ、僕は新たな妻を得る。20代で心を病んだ前妻を、ケアしてくれた訪問看護師。「奥さん、ひょっこり還ってこないでしょうか……」。絶対ないよ、と囁いて、不安げな新妻をそっと抱く。「天国ですよね、今ごろは」。僕は心で呟いた。いや、このベッドの床の下。

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「近い!」。ポッキーを口から離し彼女が叫ぶ。ポッキーの日はポッキーゲーム――高校の同級男女で盛り上がり、前日、幼なじみに練習台をお願いした。寸止めは案外ムズイ。すでに練習用は空っぽだ。「はい続行」。彼女が目を閉じ上を向く。なあもうポッキーねえんだけど。「……わかってる。だから続行」

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「お前んち行く前、コンビニ寄る」。幼なじみの彼が言う。ポッキー2箱? 高校生でしょ、1箱で我慢しなさい。「練習用と本番用だ」。何それ? 「明日はクラスでポッキーゲーム。予行練習しとかなきゃ、迂闊に誰かとキスしちまう」。……練習台は引き受ける。しくじらないよう3箱買っていきなさい。

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2対2の合コンに連れ出される。相手は同い年の女子大生。派手な1人に友人が持ち帰られ、残る眼鏡の少女と店を出た。「一夜限りを楽しめるの、ある意味羨ましいですよね」と苦笑している。今さら気づく。高校時代、僕は三桁経験した。この子だった。「虚しいね」と呟き合った誰とでも寝る最後のJK。

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「彼と飲み直す」。誘われた2対2の合コンで、大学の友人に囁かれた。「貴女ももう1人と遊んじゃえば?」と笑う彼女に首を振る。「堅物だなあ。一夜限りを楽しめるの、今だけよ」。お気遣いなく、行ってらっしゃい。楽しさは想像できる。まだ両手ぐらいなんだよね。私は飽きた。JK時代に100人寝て。

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大学の先輩の好意を感じる。応えたいけど踏み出せない。先輩も確か一人暮らし。つき合えば、そういうこともするだろう。でも私は未経験で、足がすくむ。その夜、勇気を奮いアパートを訪れた。「えっち知りたい? いいけど、隣も学生だから、控えめにな」。音を絞って、兄に大人の動画を見せてもらう。

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大学の後輩に告れない。仲はいい。でも交際に躊躇しているようにも感じられる。アパートで布団にくるまり彼女を想う。薄い壁の向こうから、夜の声が聞こえてきた。確か隣も若い男だ。片想いには地獄だな。翌朝、どんな子だ、とドアスコープから外を覗く。本当に地獄だ。眠そうな後輩が部屋を出ていく。

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彼女は笑顔でサバサバしてた。高校の友だちも、男女を問わず大勢いた。でも俺に告ったその後で、変わってしまう。笑うより拗ねる機会が増えていき、自分で世界を狭めていく。彼女の魅力が褪せたのは、多分隣の自分のせいだ。親友みたいに大切だから覚悟を決める。俺は今日、別れの言葉を彼女に告げる。

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