掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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2025-01-22

彼に頼まれ彼女とのデートを取り持った。中学以来の腐れ縁。想定外に盛り上がり、彼と彼女の話は尽きない。端で見ながら何だか苛立つ。2人になった帰り道、想いは分かっただろうから、次は直接誘いなよ、と啖呵を切った。苦笑して私を見つめ彼は言う。「ごめん、理解できたの自分の気持ちの方だった」

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昼休み1人ラノベを読んでると、彼女に本を取り上げられた。2年連続同級生。時々視線があうけれど、ほぼ会話はしたことない。「あのね、君を好きな幼なじみの美少女なんているはずないの」。ぼっちで陰キャ。妄想なんだし勝手だろ、と言い返す。ため息ついて彼女は言った。「私ぐらいで妥協しない?」

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「そう思うんだ」。才色兼備の幼なじみに睨まれる。高校から野球部のマネージャー。大方、好きな奴でもいるんだろ。いいよ、見損なえよ。陰キャな僕とは釣り合わない。「本気の誰かを本気で支える。私の性格知ってるよね?」。俯く僕に彼女は言った。「私に本気じゃないんなら、私は君から降りるから」

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病院で高校時代の彼女に会った。卒業後、彼女は看護学校へ、僕は上京し大学に進む。やがて音信不通になり、10年が過ぎた。ともに夢を叶えたね、お互い独身なんだーー。病室で話に花が咲き、僕は涙を必死でこらえる。余命半年。「最後までよろしくね」。寝間着姿の彼女が、病床から白衣の僕に微笑んだ。

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もしやと思う。彼女は年々若々しくなり、僕の心を見透かすようなことも言う。彼女の時間は逆行し、特殊能力も備えてる?――。意を決して尋ねると「何それラノベ?」と失笑された。「もう30歳。年相応のメイクしてるの」。じゃ、読心術は何なんだ!? 「10年も交際してれば厨二病の考えだってわかります」

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「わからないんだ。姉だよ私」。キスの後、彼女が言った。双子の美人姉妹。恋人は妹の方だ。狼狽えてると彼女が囁く。「胸のホクロ?」。僕が小さく頷くと、彼女は制服のリボンを外した。膨らんだ白い肌にホクロはない。「姉の体を知ってるんだね」。妹が仕掛けた罠と僕の罪。恋の終わりを知らされる。

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「実は俺んち猫がいて」
「ほほう。それで衣服に黒い毛がついてるんだ」
「じゃれてくるからどうしても」
「へえ……。この前あなたが猫とお散歩してるの見たよ」
「え?」
「飼い主と別れた後で、黒猫さんに聞いてみた」
「な、何を?」
「『あなたのご主人、栗色の毛の猫も飼ってませんか?』って」

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こらこら近いぞ。放課後、幼なじみと2人きり。彼が急に間合いを詰めた。少女漫画の相場では、ドキドキさせて「髪や睫毛に何かついてる」「熱っぽいのでおでこで検温」の肩透かし。で、どれよ? 訊こうとした矢先、そっと唇を塞がれた。え、何この展開? 彼は微笑み「幼なじみが恋人に変わる瞬間」。

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「それじゃあね」。困ったように、薄く笑って、彼女が背を向けた。長い髪をきゅっと束ねたポニーテール。高校時代、その姿に一目ぼれした。あれから3年。いつも隣に君がいた。いつからだろう、互いの温度が冷めたのは。彼女の背中が遠ざかる。変わらぬ髪をぼんやり眺め、変わった想いに泣きたくなる。

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