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鯨井あめ『きらめきを落としても』読了。大学生たちの日常がほのかに、けれど劇的にきらめく瞬間を切り取った珠玉の短編集。全編を通して感情を溜めに溜めていちばん効果的な場所で爆発させる手腕が見事だ。「燃」がとりわけ好き。「言わなかったこと」も刺さった。鯨井作品のきらめきを追い続けたい。
十市社『滑らかな虹』読了。真実を教えられた児童たちの葛藤や彼女らを導く教師たちの逡巡がひどく繊細に描かれていて、あの頃の教室での感覚が生々しく蘇ってくる気がした。すべてが終わった後のことがたっぷりと語られる構成やよし。あやめが見惚れた滑らかな虹はきっと、またすぐに見られるだろう。
八目迷『琥珀の秋、0秒の旅』読了。時間が止まった世界を函館から東京までひたすら歩くロードノベル。反りの合わない少女とのボーイ・ミーツ・ガールでもある。麦野とあきらのとりとめのないやりとりや移り変わっていく心情がとても丁寧に描かれていて楽しい。2人の距離が近づくと私までうれしかった。
キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』読了。言葉の通じない生命体の記録、もうここにはいない誰かの感情。不可解なものへのアプローチを諦めずたゆまぬ挑戦を続ける人々の姿は切なくも美しかった。「館内紛失」がもっとも心に残っている。たとえデータでも、確かに繋がったのだろう。
河野裕『さよならの言い方なんて知らない。7』読了。8月をループする街、架見崎での土地を巡る戦争はおそらくいよいよ終盤戦。今回の香屋歩の目的が分かったとき鳥肌が立った。詳しく説明すると魅力を削ぐことになってしまうのがもどかしい。今いちばん続きが読みたいシリーズ。もっと広まってほしい。
🎬天気の子
改めて好きな映画だと感じた。土砂降りだった天気が晴れに変わっていくだけで、なんだか泣きそうになる。私はやっぱり帆高の選択を肯定したいし、夏美や最後の須賀のように動ける大人でありたいと思う。初めて観たときよりもすべてがおもしろくて身体が熱くなった。この先何度でも観たい。
篠アキサト『楽園ノイズ1』読了。凛子編の山場である屋上の場面でやはり泣いてしまった。ここは紛れもない楽園ノイズの世界。凛子も真琴も華園先生も詩月もほんとうに美しい。とりわけ凛子の初登場カットが言葉を失うほど素晴らしかった。楽器や楽譜もすごく描き込まれていて細部まで見るのが楽しい。
相沢沙呼『invert II 覗き窓の死角』読了。中編と長編からなる贅沢な作品集。こうだろうと考えていた事件の全容がある一点で“反転“し、新たな構図が浮かび上がる瞬間の爆発的な驚きは、倒叙ミステリだからこそのもの。作者ならではの眼差しや遊び心が詰まった最高の一冊だった。翡翠の過去が気になる。
四季大雅『わたしはあなたの涙になりたい』読了。喪失に痛みを感じる少年と運命を鳴らせる少女の、出会いと別れのその先を描いた静謐な物語。特に後半の演奏シーンの優しく儚い美しさは圧巻だった。多くの要素を繋ぎ合わせなめらかな一編の小説にまとめ上げた手腕が見事。込めたい祈りが伝わってきた。
八重野統摩『ナイフを胸に抱きしめて』読了。法では裁けない相手に個人が罰を与える。“復讐”する者とされる者の心理を深く掘り下げ丁寧に描き切った傑作ミステリ。最後にタイトルの意味が分かったとき彼女の決断に息が詰まった。彼女たちはこれからどう生きるのだろう。十年後の物語を知りたくなった。