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#140字小説
わたしは眠り姫。…目をつむって、王子のキスを待つ。きりりと鼻筋の通った、ハンサムな青年が、そっと私のベッドのわきに立つ。…薄目をあけたわたしの頬に、手を、……そこで、いつも目が覚める。となりで、子供が寝ている。そのむこうにいる夫の顔は、王子とは程遠い。それでも、私は。
#140字小説
ああ、憑いてるね。悪霊、ってやつ。ちょーっと嫌がらせをしてくるかもしれないから、気をつけてね。…大丈夫。呪い殺されるようなことはないよ。…だって、キミが死んで幽霊になったら、殴り返されちゃうでしょ。それは、向こうもちゃんと分かってるから。がんばってね!
#140字小説
流星群だ。「学校がなくなりますように!」三回唱えると、遠くでどかんと音がした。翌朝、テレビで、学校の敷地が更地になっていると。どうしよう、私のせいだ。青ざめていると、同級生のミキちゃんから電話。「どうしよう。昨日、流れ星に…」と涙声。なあんだ、私だけじゃなかったんだ。
#140字小説
「知らなかった?フツーに入社してきたの、佐藤クンだけよ」缶コーヒーを奢ってくれた先輩の足を見ると、太腿から下が透けている。地獄が満杯で、現世のブラック企業で罪を償っているそうだ。そういえば、上司の額には角があるし、入社式では社長が大鎌を持っていた。…転職、検討しよう。
異世界八景 第百三十四話「ときならぬ大波」
今日のまめちしき ハギアの一族が戦うときは、両手の指に貝でつくった鋭いナイフを装着します。
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#小説家になろう #小説家になろう
挿絵:midjourney
#140字小説
ざぱん!人魚が波間からとびだして、尾びれを振ってくる。水の惑星ルルギ。第一次移民計画でテラフォーミングの対象になった星のひとつだ。遺伝子改造でここに適応した移民たちは、長い年月のあいだにすっかり文明を失ってしまった。それでも、ここは彼らの星だ。やあ、こんにちは!
#140字小説
「行かないで!」死地におもむくあなたに、わたしは必死で声をかけた。あなたはにこりと笑って、わたしをぎゅっと捕まえてキスをした。わたしはびっくりして何も言えず……、あなたが立ち去ってから、しずかに、ゲロを吐いた。
異世界八景 第百三十三話「幼なじみ」
今日のまめちしき 世界の気温は下り坂にあります。
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#140字小説
(あ、これ夢だ)気づく。試しに、子供のころ好きだったアニメの必殺技をくり出してみる。…出ない。そういえば昨日も、箒で空をとぼうとしたのに、浮かなかった。夢の中ではたいていそうだ。…ずっと前は、自由に何でもできたような気がする。そんな気がするだけ、かもしれない。
#140字小説
深呼吸して、飛び降りる。崖下までのほんの数秒、走馬灯のように今までの人生を追体験する。…誕生、学生時代、あなたと出会って、別れて、それから崖へ。…また、走馬灯。なんど繰り返しただろう。同じ出会いと、同じ別れ。気が遠くなるほどの年月を経て、ようやく、わたしは死を迎えた。