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掌編小説(140字)@縦読み漫画(原案)配信中さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。絵はイトノコさんや春さんの作品。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。サブ(@syouhensub)、Pixiv(pixiv.net/users/95883938
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東京の大学に進学する。雨のホームで見送られ、後輩に「妹みたいな私と離れて寂しいですね」と笑われた。お前こそ半べそじゃん。「涙じゃなくてこれは雨」。呟く彼女に声を殺して想いを伝えた。「口の動きが見えません」。電車の扉が俺らを隔てる。よく見ろよ。曇りガラスに「好きだ」と書いた鏡文字。

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高校の先輩が進学で上京する。寂しくて半べそかくでしょうから、と笑って駅まで見送った。雨のホームに電車が止まる。「お前こそ泣きそうじゃん」。相変わらず節穴ですね。これは雨です。「なあ俺……」。先輩の言葉を遮り扉が閉まる。雨のせいで見えません。その唇は「好きだ」と動いているんですか?

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ごめん、あまり上手にできなくて――。毛布にくるまり高校の同級生の彼女に詫びる。「ううん。むしろ嬉しいよ。君は仲間がイケメンばかり。遊んでるかと思ってた」。そういうことにくたびれたんだ。嫉妬も荒くて心が削れた。柔らかい女性の肌に口づける。ずっと僕は受け身だった。抱く側は初めてなんだ。

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交際間もない彼に驚かれる。「さっきのがファーストキス? 高校の一軍なのに。仲間も美人ばかりだろ」。望んだわけじゃないんだよ。仰ぎ見られる関係も、同性からの憧れも、空気を読んで応じることにもくたびれた。対等な君といるのが心地いい。「とはいえ僕が初なんて」。本当に最初なの、男子とは。

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踊り場手前で息を飲む。さっき私をハグした親友が、高校の同級男子に抱き締められてる。彼女は以前、「彼はただの幼なじみ。クラスに好きな子いるみたいだよ」と笑ってた。私かな、と自惚れていた。時々感じた彼の視線は、私の隣に向いてたんだね。お幸せにと胸で囁く。今ならば、まだ彼を諦められる。

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高校の教室で幼なじみがこっちを見ている。私の隣の美少女を好きなのだろう。いたたまれず、彼女をハグし、踊り場に彼を連れ出した。はいどうぞ。私は両手を左右に広げる。「え、何さ?」。間接ハグ。陰キャな君へのサービスだ。「……対価は何?」。お金はいらない。君は大事な幼なじみを失うだけだ。

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刑期を終えた。まだ20歳だった10年前、片親の父を刺殺した。3歳下の妹と重なる姿を目撃したのだ。俺は妹と相思相愛だった。妹を守るため、裁判でも完黙した。消えた母から獄中に便りが届く。妹は俺以前に母から父を寝取っていたのだ。「戻ってくるなよ」。刑務官に肩を叩かれ心で呟く。すぐ戻ります。

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三つ上の兄が刑期を終えた。10年前、片親の実父を刺殺し、黙秘した。あの日、思わぬ豪雨で兄のバイトは中止になった。深夜に帰宅し、女子高生の私と重なる父を見る。沈黙は好奇の目から私を守った。本当にごめんなさい。あの悲鳴は偽りなんだ。お兄ちゃんと結ばれる以前から、私はパパと関係していた。

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コンビニで身分証を求められた。ビール片手に免許を差し出す。店を出て、25歳に見えないのかなと呟くと、「んなことねえだろ」と隣の彼に笑われた。わかってる。だから不安でお道化るし、若作りもしちゃうんだ。ね、私たち釣り合ってるよね? 店員が歳を訊いたの、多分私じゃなくて5歳下の君の方だ。

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「失礼しちゃう」。コンビニを出たところで彼女が呟く。仕事帰りに落ちあって、今夜はうちでお泊りだ。ビールを買う際、身分証を求められてた。「25歳に見えないのかな?」。んなことねえだろ。「参った参った❤」。……おい、語尾がハートになってるぞ。童女みたいに缶をぶんぶん振るのもやめておけ。

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