掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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料理上手な彼の家で、美味しいディナーを振る舞われる。恋敵の女はいない。「もう決めたよ」と彼が微笑む。絶対に諦めないと彼女は言ってた。どう決着をつけたのだろう。「まあ……いろいろ。今夜は忘れて飲み食いしよう」。高級ワインと山盛りの肉料理。微かに彼女の香りがするのは、多分気のせいだ。

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自室に誘った元カレが、半裸の私を抱く手を離す。「未練で最初はやめようよ。お互い無限の未来がある」。半年前、一方的に別れを告げた。ともに辛いと思ったからだ。でも辛いのは私だけだね。一度好きな人に抱かれたかった。私には未来はないよ。病院を抜けてきた。別れる直前、余命半年を宣告された。

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「今日親いないから」。僕を誘った元カノが、自室のベッドに横たわる。恋人時代、僕らはそこまで進んでない。重なる直前、ともに未練で最初は駄目だ、と僕は思う。「相変わらずだね」。痩せた半裸を晒しつつ、彼女は泣いた。半年前、一方的に僕は振られた。もう前に進もうよ。お互い無限の未来がある。

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教え子が臨任の教師になって戻ってきた。高校時代に告白され、生徒だからと断った。理科準備室で校務を教え、早く帰れと彼女を見送る。「うちのOGなんですよね?」。入れ替わりに学級委員長が入ってきた。「先生のタイプじゃないですね」。笑みを浮かべた委員長が、いつものように制服のホックを外す。

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教壇で隣に並んだ担任が「副担任の産休中の臨時任用。お前らの七つ上のOGだ」と私のことを紹介した。まばらな拍手と嫉妬の視線。ああ、私もこんなふうだった。担任に告白し「生徒だから」と拒まれた。女子高生に優越感を抱きつつ、担任の顔を見る。もう教え子じゃありません。先生、色々教えて下さい。

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役者の彼が釈明する。元アイドルとのキスシーン。ドラマで見たけど迫真だった。「あれは演技。好きなのはお前だけだ」。どうかしら。「お前だって女優だろ。この前、潤んだ瞳で相手の役者を見つめてた」。映画見たんだ。だからだよ、心変わりを疑うの。まだ言えないけど、私、好きな人が変わりそうだ。

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「ほかの子とはあんな風にキスするんだ」と彼女が拗ねる。見たのかよ。「随分情熱的じゃない。ひょっとして本気なの?」。馬鹿、好きなのはお前だけだ。「へえ、どうかしら」。そういう相手をお互い選んだ。俺はちゃんと割り切ってるぞ。「……そうだけど、やっぱり妬ける。役者のあなたのラブシーン」

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「クリスマスのアリバイ作り?」。高校で幼なじみに訊き返される。少し前、先輩から聖夜のデートに誘われた。門限が厳しいんです、と答えを留保し、彼に尋ねる。「……別にいいけど」。ありがとう、と頭を下げてその場を立ち去る。拒まれるかと思ってた。自惚れだった。さよなら、淡く惹かれていた人。

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高校の先輩に、幼なじみが口説かれた。気の置けない関係なのに、最近彼女が気になっている。「内緒の話があるんだけど」。2人きりの教室で、彼女が囁く。「クリスマス、あいている?」。先輩じゃなく、僕の予定を確かめるんだ。彼女も同じ想いでいてくれるのかな。「……アリバイ作り、頼めるかな?」

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貴女こそ美人なのに彼氏いないよね?――女子大の同級生に訊き返す。「……実は同じくトラウマが」。私は工業高でクラス1人の女子だった。みんなに告られクラスは崩壊。でも貴方は共学普通高でしょ? 「……私は何もしてないのに部活二つが壊れたの」。え!? 「漫研と文芸部で、ただ1人の女子だった」

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