掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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相談したい、とLINEを送る。サッパリしてて一番仲いい女友達。「何よ? 私に惚れたとかならお断りw」。いや違う。今朝目覚め、急な変化に気がついた。「だから何?」。男だけに感染する、都市伝説のウィルスかも。「へえ。とりま高校近くで会って話そう」。ドン引きするなよ。女に変わった俺の姿に。

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高校帰り、電車で座った幼なじみが舟をこぐ。おい脚が開き気味だぞ。「下着見えそう? 平気よ、スパッツ履いてるもん」。そういうことじゃねえんだよ。「陸部のパンツと同じでしょ。女子部員をそういう目で見ていたの?」。違うって。「じゃ何よ?」。……絶対言わねえ。見ているの、お前だけだって。

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幼なじみが下着姿で現れた。届け物をした自宅玄関。こら気を抜くな。私だって女子高生だぞ。「は? トランクスなんて陸部のパンツと同じだろ」と彼が笑う。「男子の短パン、ずっとそんな風に意識してたのか」。違うって。「じゃ何だよ?」。……絶対言わない。意識し始めたのは最近だ。あんたのこと。

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医師の父母とは血が繋がらないと気づかされる。16年前、実の親は私を産んだ。血液病の年子の姉のドナーとしてだ。不妊の父母は私の親の主治医だった。臍帯血を採取後に、死児とすり替え、実子として私を育てた。まだ見ぬ姉を憎悪する。貴女は本当は死んでいた。貰うよ今度は、私の病んだ代わりの心臓。

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また背を押され転落しかける。通学路にある崖沿いの暗い道。生後すぐ、血液の難病を発症した。奇跡的に生還したのに、17歳で絶対死ねない。逃げる少女を追いかける。手を掴み、振り向かせ、絶句した。どういうこと? 「……貴女は本当は死んでいたんだ」。私と同じ顔をした、痩せた少女が泣いている。

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「全男子と寝てるって、噂は本当?」。高校の同級生に尋ねられる。自らを肯定できず、ギャルを装い、求められるまま抱かれてきた。一瞬満たされ、その後心が削られる。陰キャな彼に自分を重ね、分かってくれると妄想してた。拒んでほしいと切望し、私は囁く。噂は嘘。君とはしてない。ねえ、抱きたい?

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全男子とヤっている――。高校の同級生が噂してた。彼女の見た目は確かにギャルだ。でも以前、転んで怪我した陰キャな僕に、ハンカチを貸してくれた。以来、密かに焦がれてる。耐え切れず、問いかけた。あの噂は本当なの? 「嘘よ」。安堵した僕に向かい、彼女が笑う。「だって君とはしてないじゃん?」

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高校の女子を誘って告る、と計画した。家族にも、イヴは帰りが遅くなる、と宣言した。誘いの言葉にまさかのNO。恥ずかしく、こっそり幼なじみの部屋で過ごす。「彼女のどこが良かったの?」。優しくサバサバしてるとこ。「容姿じゃないのね」。俺は性格重視派なんだ。「だったら私でいいんじゃない?」

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「イヴに内緒で一緒にいたい」。幼なじみがLINEを寄こす。あんた、家族にも「クラスの女子を誘うんだ」とイキってたでしょ。やだ、実は私が好きってこと? 私だって女子高生。心の準備が必要なのに。「そこを何とか」。……もう、仕方ないなあ❤ 「彼女に誘いを断られ、家にいるのが恥ずかしいんだ」

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「ワインもお肉も美味しいね」と彼女が笑う。俺に惚れた女の1人だ。家に呼び、手料理を振る舞った。「選ばれて、私、幸せ」。そう囁き、机に突っ伏す。執着心に折れたんだよ。「牛肉に混ぜた薬、もう効いた?」。ああ、よく寝てる。「じゃ始めよう」。もう1人の恋人が、ナイフを握り奥から出てくる。

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