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彼女は笑顔でサバサバしてた。高校の友だちも、男女を問わず大勢いた。でも俺に告ったその後で、変わってしまう。笑うより拗ねる機会が増えていき、自分で世界を狭めていく。彼女の魅力が褪せたのは、多分隣の自分のせいだ。親友みたいに大切だから覚悟を決める。俺は今日、別れの言葉を彼女に告げる。
高校帰り、「ごめん、俺たち別れよう」と告げられた。何でも話せる友だちが、彼になり、私の好きが募りすぎて重たくなった。「泣くなよ。変わらずお前は大切だ。また友だちとして話そうぜ」。そういうの、ずるいと思う。優しさを装った牽制だよね。言えなくなるじゃん。まだ好きだ、やり直したいって。
式場の物陰で、ドレスの新婦が綺麗な女性とキスしていた。以前写真で見せられた、女子高時代の友だちだ。「な、やっぱり彼女、バイだっただろ?」。親友が囁いた。「でも結婚すんだよな?」。ああ、むしろ気楽になったよ。「お互い様っていうやつか」。俺と同じ両性愛者の親友に、首筋を甘噛みされる。
「ずっと好きだった」。式場の片隅で囁かれる。知ってたよ。だって私もそうだった。「結婚後、こっそり新居に行っていい?」。うん。旦那はきっと気づかない。「……これも不倫かな」。どうだろう。世間体に縛られて、私の方がいけなかったと思ってる。バイの私の唇を、女子高からの親友がそっと塞ぐ。
結婚予定の彼女を連れ、実家に帰る。母とはすぐ打ち解けて、一緒に家事をしてくれた。「厳しい親に育てられ、お嬢様大に在学中、意趣返ししちゃったの」と以前彼女は話してた。父が黙って腕を組んでる。偏見や差別はするな、と僕を厳しく躾けてきた。二言はないよな。彼女が元AV女優と気づいていても。
息子が彼女を連れてきた。結婚すると話してる。もてなす妻と、食後は皿を洗って帰った。「いいお嬢さんね。美人だし、気遣いも完璧だ」。妻が微笑む。息子には偏見や差別は駄目だ、と教えてきた。だから俺は押し黙る。あいつは気づいているのだろうか。3年前に引退したけど、彼女がAV女優だったこと。
もう保育園に行きたくない。男の子にいじめられ、お友だちも先生も、助けてくれない。正義の魔法少女もテレビの中から出てこない。「少女じゃなく、魔法だって使えないけど、あなたを守る人はいる」。本当に? 「うん。怖いけど、男の子のママとパパ、先生と、ちゃんと戦う」。ママが私を抱き締める。
魔法少女に憧れた。身を賭してでも不正を正す。でも歳をとるうちに、魔法なんてないと知り、今の私は一児を育てるただのママだ。「……あのね、保育園、行きたくないの」。娘が私の腕で泣く。いじめられているらしい。きつそうな保護者の顔に身がすくむ。魔法はない。大丈夫、それでも私は不正を正す。
高校の同級生が痛々しい。仲間の輪に加わらず、軽薄で虚構だと、見下すふりして弱い自分を守っている。気取った孤高は脆い鎧だ。こういうふうに見えていたんだ、と同じぼっちの私は気づく。「本物」は傷つきながらも求めないと得られない。息を吸う。淡く惹かれた窓辺の彼に、勇気を奮って話しかける。
高校なんて下らない。薄い話と表面的な友情ごっこ。井の中の蛙たちのマウント合戦。だから俺は孤高を選ぶ。きっとどこかに「本物」があるはずだ。「ならば自ら探しに行きなよ」。同じぼっちのクラスの女子が吐き捨てた。お前は探しているのかよ? 「いるよ。だからこうして勇気を奮い、話しかけてる」