掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「先生! 授業中、彼がずっと何か書いてました」。小6の帰りのHR。女子の委員長に告げ口された。何かと僕に絡んでくる。あいつ見てたんだ。何やってたと担任に問い詰められ、僕は必死で否定する。ニマニマと彼女が僕を眺めてる。言えるかよ、小悪魔みたいな初恋相手に、ラブレターを書いてたなんて。

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母に頼まれジュースと菓子を持っていく。いつもの調子でノックせず、弟の部屋のノブを捻る。制服の可愛い彼女とキスしてた。慌てて私は戸を閉める。高2の自分の一つ下。幼い頃から「姉貴姉貴」とつきまとわれ、いつまでもガキんちょだ、と感じてた。何だか胸が苦しくなる。あいつ、男の子だったんだ。

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うっかり風呂場の扉を開き、すぐ閉める。高2の姉が湯舟で泣いてた。昔から男勝りで、年子の俺はいつもやり込められてきた。半年前、彼氏ができたと聞いた時、物好きもいるもんだ、と鼻で笑ってはたかれた。今夜、失恋したらしい。何だか胸が痛くなる。白い肌、豊かな胸。姉ちゃん、女の子だったんだ。

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大学で3歳上の彼女に恋をした。最初の夜、僕は優しく導かれる。あれから6年。最近彼女が焦れている。心から大好きだ。けれど何度肌を重ねても、名前も知らない元カレたちへの嫉妬心を拭えない。彼女は別れを切り出して、「あなたを最後にしたかった」と呟いた。ごめん。僕は「最初」になりたかった。

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三つ下の彼と別れた。大学から交際し、もう6年。心地いいけど足踏みばかりの関係だった。独りぼっちの帰り道、最初の夜を思い出す。19歳の彼は初めてで、私は3人経験していた。「お前の最初になりたかった」。拗ねるように囁く声が忘れられない。ごめんね。私はあなたを「最後」にしたいと思ってた。

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病死した父の記憶はない。母は独りで働き、料理をつくり、俺を育てた。ママと結婚する――。園児の頃はそんなことまで口にした。17歳の今までありがとう。今日で四十路になるんだな。勤務先に気になる人がいるんだろ? 俺にも片想いの同級生ができた。もう平気。なあ、お袋。自分の人生、生きてほしい。

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「俺、高校で好きな子ができた」。誕生日にそう言われた。いつか私と結婚したいと言ってたよね。あなたのために料理もつくってきたじゃない……。「もういい。そっちもいい人見つけろよ」。涙を堪え私は思う。そうか、これは彼なりの贈り物なんだね。成長に目を細める。私は一人息子のシングルマザー。

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「クリーニングして返すから」。幼なじみの彼女が言う。金曜日、「学ラン貸して」と頼まれた。週末に高校の体育祭で応援団をやるらしい。日曜夜、いいから返せ、と奪い取る。異性と意識したことはない。なのに無性に照れ臭い。部屋で一人、学ランを身に纏う。女の子の甘いボディーソープの香りがした。

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「学ラン貸して?」。うん、高校の体育祭で応援団長やるんだよ。「ちょっと照れるな」。幼なじみの彼が言う。チビの頃から知り尽くしてるのに、今さら何を照れるのよ? 帰宅して自室で羽織り、しゃがみ込む。やだ、知らないことが二つもあった。男の子の匂いがする。それにドキドキしている私がいる。

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好きな人がいる――。そう言って女子高の同級生に近づいた。彼女には男子高に彼がいる。優しく話を聞いてくれ、毎日LINEでトークした。私は胸が痛くなる。半月前の放課後に、耐えきれず、恋する相手を打ち明けた。まだ目覚めてないけれど、あなたは彼以外も愛せるよ。大好きなんだ、彼氏持ちの同級生が。

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