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せっかちで心配性の私のことを、いつも彼は支えてくれた。高校の放課後に告白し、3か月。今夜も私はLINEを送る。病みそうだと感じた深夜、2時間経って返事が届く。「勉強してた。ごめん何?」。何でもないよと私は返し、自己嫌悪で涙ぐむ。大らかでせわしなくない彼の魅力が、彼女になって色褪せる。
「田舎は嫌だ」。高校の同級生の彼が言う。東京で挑戦してみなよ。笑顔で見送り、駅のホームで大泣きした。2人で通った喫茶店も書店も今はない。街は随分変わったけれど、私の気持ちはそのままだ。彼は自分の居場所に迷っている。作れるよ、変わらぬ居場所をこの街で。疲れた彼が10年ぶりに帰郷する。
高校の元カノと通った喫茶店はファミレスに、書店はコンビニになっていた。東京には向いてない。そう気づき、10年ぶりに田舎に戻った。でもここにも僕の居場所はなさそうだ。「居場所は『ある』んじゃなくて『作る』んだよ」。再会した元カノが笑ってる。「また逃げる? それとも今度は一緒に作る?」
いかんいかん、と浴衣を脱ぐ。私ウキウキしているみたいじゃないか。17歳の幼なじみが彼女に振られた。元カノと行きたがってた夏祭り。慰めるよと、代役を買って出た。浴衣をしまい、Tシャツ姿で家を出る。合流場所への道すがら、鼻歌を歌っていた。いかんいかん、ウキウキしているみたいじゃないか。
振られた僕を17歳の幼なじみが誘い出す。何だ浴衣じゃねえのかよ。「慰め役に随分な物言いね」。Tシャツ姿の彼女が笑う。「元カノと行きたかったんでしょ、夏祭り? 代打するから忘れなさい」。腕を絡めた彼女の胸に、僕の肘がそっと触れる。……悪くないな、Tシャツも、幼なじみと2人きりの夜祭も。
彼のボールはゴールをそれた。高校最後のサッカー大会。アディショナルタイムが終了し、準決勝で敗退した。女子マネは全員公平――。心に誓ってきたくせに、今日の私はずっと彼を見つめてた。マネージャー失格だけど、お互い引退だからもういいね。彼に想いを伝えよう。卒業までの2人だけの延長時間に。
高校最後のサッカー大会で競り負けた。勝ったら勇気を振るって女子マネに告白する。そう決めていた。「君はよく頑張った」。彼女が僕を慰める。もう優勝も恋も諦めるしかないんだな……。「サッカーは大学でもできるって」。彼女は微笑み言葉を継いだ。「恋の方は、アディショナルタイムがあるかもよ」
昼休み、高校の電算室のPC利用を彼女に譲る。「終わったよ」。すぐに操作を切り上げて、小走りに部屋を出て行った。やっぱあの子が大好きだ。ため息ついて僕は再び検索窓に「片想い」と入力する。「同級生」と「告白方法」、彼女の氏名は僕の履歴だ。その上に、新たな履歴がもう一つ。「きっと叶うよ」
高校の電算室でクラスの男子がため息ついてる。昼休み、ずっとPC独占する気? 「あ、悪い」。慌てて彼が席を立つ。ブラウザを立ち上げて、周囲を伺い検索窓に「片想い」と入力する。……あいつ同じ悩みなんだ。履歴に残る「同級生」と「告白方法」はいいけれど、私の名前は恥ずかしいから消しといて。
天使のような幼児の頃、反抗期の中学時代……。時に厳しく一人娘を育ててきた。女子大に通う今、留学を考えているらしい。老いてからの子どもだった。不安な私に妻が微笑む。「信じましょう。私たちの娘でしょ」。そうだな。そろそろ信じて伝えよう。養子だけれど、お前は間違いなくパパとママの子だ。