掌編小説(140字)@縦読み漫画(原案)配信中さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@縦読み漫画(原案)配信中さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。絵はイトノコさんや春さんの作品。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。サブ(@syouhensub)、Pixiv(pixiv.net/users/95883938
novelup.plus/my/profile

フォロー数:9917 フォロワー数:14177

上映開始10分で彼は寝息をたて始めた。あまり眠れてなかったらしい。「片思いの同級生に告ったけど、玉砕した」。昨夜、私のスマホに電話があった。幼稚園からの知り合いだ。前売り券の処分役を引き受けた。右肩を彼の頭に貸しながら、動悸が少し早くなる。おかしいな。この恋愛映画のせいに違いない。

18 135

「みっともないからやめなさい」。バレンタインまで1週間。辺り構わずチョコがほしいと口にしてると、クラスの女子にたしなめられた。中学以来の腐れ縁。わかったよ……。でもゼロってのは惨めだから、お前、義理チョコ一つぐらいは恵んでな。「あげないよ」。え? 「義理チョコなんて、あげないよ」

25 144

保健室で横になる。職員会議で先生が退室したすぐ後に、先輩がやってきた。体育でどこかぶつけたらしい。「どうした?」。自分で湿布を貼った後、私に気づく。少し熱が、と答えると、そっとおでこに触れられた。「微熱じゃないぞ。顔も赤いし」。先輩、手どけてください。本当に微熱じゃなくなります。

13 70

互いに高校生だった3年前、私は兄と道を踏み外した。いけないと思いつつ、想いを断てない。大学入学後、兄は実家を離れ、彼女を作った。兄の決意は伝わった。でも切なくて、涙が止まらない。その晩、3か月ぶりにLINEが届く。「振られたよ」。涙を拭い、兄のもとへと急ぐ。私は決めた。地獄に落ちよう。

14 88

「あなたの想いが信じられない」。彼女が大学近くの1DKを出て行った。2人とも今のままだと駄目になる。そう思い、無理して始めた同棲は、3か月しか続かなかった。封印した気持ちが滲んだのだろうか。うなだれる僕を背後から優しい手が抱き締める。「もういいよ。2人して地獄に落ちよう、お兄ちゃん」

24 132

長い髪をバッサリ切った。もう片思いはやめにしよう。登校すると、みんながこっちをチラチラ見ている。「何かあったの?」。彼が声をかけてきた。今まで一度もなかったことだ。「長髪でお嬢様みたいで近寄りがたく……」と頭をかく。中身は全然違うんだけどな。よし決めた。片思いをやめるのやめよう。

14 65

「寒ぃ」
「学校帰り、ピザまんでも買っていこうよ」
「お前、元幼なじみとはいえ、ロマンがないな」
「あんたがロマン! 腹が痛いわ」
「お前だけど彼女持ちになったしな」
「お前だけど、は余計だね」
「もっと安上がりなぬくもりあるだろ」
「えっ……人肌とか……?」
「肉まんのほうが10円安い」

9 62

彼がクラスメートの美少女と映画に行った。偶然知って抗議する。「お前は単なる幼なじみ。しかもアニメなんて興味ないだろ」。彼女の趣味は、もちろん知ってる。「何だよ。焼きもちか?」。戸惑いつつも笑顔の彼に、その通りだよと内心毒づく。言えないけれど、ずっと好きでいるんだぞ。彼女のことが。

10 61

後輩の美少女に告白される。幼なじみに相談し、応援されてつき合い始めた。デートで行った水族館。「あいつもイルカ好きなんだ」。カフェでは「苺パフェ、あいつと好物同じだね」。1か月後、後輩に別れを切り出される。私じゃない人好きなんですね。困惑し、「誰のことだ?」と幼なじみに訊いてみる。

10 62

彼の恋心には気づいていた。会社の後輩。素直で可愛く仕事もできる。社内では内緒の恋人と、私は春に結婚する。バツイチのその人は、私と彼の所属長。間近になって伝えれば、彼を傷つけ仕事に支障が出るかもしれない。次の休日、一足先に打ち明けよう。弟みたいに大事な彼への、せめてもの誠意として。

14 92