掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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斎場で7年ぶりに大学の親友と再会する。私は彼女と競い合い、卒業日、彼に選ばれ結ばれた。息子が3歳を迎えた日、夫は事故に遭う。卒業前夜のことを謝りたい――。夫は死に際、そう言った。何を告白する気だったのだろう。「あのお姉ちゃんパパそっくり」。親友が連れた6歳の娘を見つめ、息子が呟く。

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衣服をまとい彼女が家を出て行った。交際4年。昨夜も重なり、ともに「好きだ」と言い合った。つきあい始めた高校時代を思い出す。手を繋ぎ、キスするだけで互いの気持ちは伝わった。今や口にしないと惰性を自覚している自分たちを欺けない。愛する想いは時間に溶け、快楽だけが狡い大人の僕らを結ぶ。

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「やめておきなよ」。親友の反対を押し切って、彼と交際する。私はどんどんのめり込み、身も心も捧げたところで突然振られた。家に籠って泣く私を、親友が優しく慰める。「元気出してね。彼にはきっと罰が当たるよ」。ごめん、本当はあなたの想いに気づいてる。同性を愛せない、自分の指向が恨めしい。

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彼が私の虜になっている。「好きすぎておかしくなりそうだ」。彼の顔を笑って眺め、そろそろ別れ時かと考える。そう、あなたは彼女に同じ思いをさせたんだ。好きな気持ちの頂点で、手酷く捨てられ彼女は今も家を出られない。だから密かにあなたに秋波を送った。これは復讐。私が愛する彼女の代わりの。

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高校で片想いの女子に拒まれた。半月前、幼なじみに相談し、励まされて告白した。飲み物も喉を通らない。そういやあいつも誰かに失恋したと言ってたな。茶化して本当に悪かった。「いいよ。奢るから残念会で何か食べよう」。お前はもう食えるようになったんだ。「うん。失恋相手が失恋したらしいから」

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「振られて飯も食えない」。高校生の幼なじみが凹んでる。半月前に相談され、背を押した。「失恋キツいな。あの時茶化して悪かった」と詫びられた。まあいいよ。私も失恋直後だと、こぼした自分が迂闊だった。よし、今日は美味しいもの奢ってあげる。「……食えるんだ」。うん、たった今、食欲戻った。

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一つ下の彼女のことが大好きだ。「絶対先輩と同じ大学に行く。一生一緒にいたいもん」。受験を控え、少し迷ってお守りを2個買った。「合格祈願」は試験場に持っていけ。別の1個は10年後まで取っといて。「何です、それ」と笑われる。僕もお前と同じ気持ちだ。秘密だけれど、もう一つは「夫婦円満」。

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受験前日、彼にお守り二つを渡された。高校の先輩で、今は志望大の1年生。「合格祈願は明日持っていけ。もう一つは10年先まで取っといて」。ごめんね、先輩。気になって仕方ない。自室で袋から取り出して、私はちょっと後悔する。ドキドキが止まらない。……先輩、気が早いです。「夫婦円満」なんて。

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バレンタインまで1か月。教室で今年も女子に愛想を振りまく。ちらりと彼女を盗み見ると、呆れたように睨まれた。中高一緒の女友達。「いじましい。今年も私があげるから、やめなさい」。わかってないな。義理チョコなんて必要ない。本命チョコがほしいから、妬いてもくれないお前の前で道化てるんだ。

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教室に忘れたなら、俺の使うか? 高校の帰り道、後輩に手袋を差し出した。もう半年も好きだけど、彼女の気持ちがわからず言い出せない。案の定、手袋を握ったまま俯いてる。しくじった、と取り返そうと伸ばした手を、ぎゅっと彼女に握られた。「……先輩。直接この手を貸してもらっちゃダメですか?」

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