掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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夫が寝言でほかの女性の名を呼んだ。結婚は、わずか5年で破綻した。旧姓に戻り、迎えた最初のお正月。少し遅れて年賀状の返信が届く。「元気出せ。僕もまだ独身だ」。離婚を伝えた高校時代の元彼だ。あの頃、気恥ずかしくて互いに姓で呼び合った。懐かしくて切なくて、久々に彼の名前を呼びたくなる。

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高校の記憶には必ず彼女がいる。初めての恋人だった。照れ臭く、互いに上の名で呼び合った。大学で距離ができ、卒業後、年賀状で結婚したと知らされる。新姓になじめずに、独りの僕は戸惑った。あれから5年。年賀状の懐かしい文字を眺めつつ、久々に彼女を呼んでみたくなる。「元の名前に戻りました」

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「待ち人来たらず」。初詣のおみくじにため息つく。もう半年も高校で同級の彼に片想い。「元気出しなよ」。私の背中を親友がポンポン叩く。美少女で性格も抜群なのに彼氏はいない。あなたに想われる相手は幸せだろうな。握った紙片を読み直し、私は思う。「身近に良縁あり」って、一体誰のことだろう?

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あけましておめでとうございます✨
旧年中は大変お世話になりました。
今年も宜しくお願いします!
朝8時、夕5時のアオハル系?続きものと夜11時の黒ショートを投稿してきましたが、繁忙期で少し夜を休みます💦
新春のご挨拶にもイトノコさん(https://t.co/jOXqfPQ9Rg)のイラストお借りしました🐯

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彼と初めて迎えた大晦日。恋人ができたらやりたいことがあったけど、恥ずかしくて言い出せない。初詣に向かう夜の道、カウントダウンの声がする。年越しの瞬間に、迷った挙句キスをした。彼が呆気にとられてる。……ごめん、引いたよね。「今年の末は予告しろ」。今度は彼に、新年初めて唇を塞がれた。

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「さんざんな1年だった」と同級生の彼女がぼやく。この高校も第二志望だったらしい。夏に陸上部で腱を切り、インハイの夢を諦めた。元気出せよと誘ったバンドで、初めて握ったベースに苦戦している。負けず嫌いは長所だけど、僕の横では力を抜け。大丈夫。来年こそはいい年だ。秋から僕らは恋人同士。

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直接の告白はおっかない。LINEは誤爆が怖い。扉がない高校の下駄箱には手紙を置けない。年賀状で距離を縮めるのが無難かな。迷っていると郵便局前で片想いの彼女に会う。「あんたにも年賀状あげようかなって」。古風だな、と憎まれ口を叩いてしまう。「じゃ、やめる」。……ごめん、住所聞いて下さい。

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郵便局を出たところで高校のクラスの男子に出くわした。「え、今どき紙の年賀状か」。いいでしょ、大事な相手に3枚だけだし。「古風だな。で、誰に出すのさ?」と彼が訊く。両方のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに1枚ずつ。「もう1枚は?」。……あのさ、郵便番号から教えてくれない? あんたの住所。

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診断時には手遅れだった。延命治療はやめにして、ホスピスに入居する。老いた夫に支えられ、窓からクリスマスの夜景を見た。あの世みたいに綺麗だね。「よせよ、お前はまだ死なない」。私は黙って微笑んだ。ごめんなさい、私が先で。作り笑顔は聖夜の最後の贈り物。半世紀、一緒にいられて幸せでした。

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幼なじみが彼女になった。クリスマス、初めての温泉宿。20歳のこれまでに、それぞれ誰かとつきあった。昔は一緒に入浴したこともある。なのに照れ臭すぎてキスの先に進めない。「相変わらずのヘタレだね」。笑いながら添い寝して、彼女が僕の手を握る。お前もな。ちょっと震えた小さな右手を握り返す。

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