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優しさに惹かれたはずだった。高校の一つ先輩。思い切って告白し、想いは叶う。交際して初めての夏休み。デート中、先輩の同級生と鉢合わせる。「暑いから気をつけてな」。汗まみれの彼女を気遣う彼を見て、私は胸が苦しくなる。無防備な優しさは、密かに横恋慕してる彼女に酷だ。何より私を傷つける。
夏休み、部活を終えて高校の最寄り駅まで先輩と歩く。もう半年も片思い。先輩が、買ったジュースのキャップをひねる。一口飲ませてくださいーー。言い出す前に、飲み干された。またきかっけを逃してしまう。私は自分のお茶から口を離し、ペットボトルをそっと差し出す。もう少し、水分補給しませんか?
よく行く近所のスーパーで、高校の同級生と出くわした。夏休み、彼も親から買い物を頼まれたらしい。「何がどこにあるのかわからない」と戸惑ってる。勝手知ったる店内だ。並んで歩き、案内する。将来誰かと結婚したら、こんなふうになるのかな。彼の顔を盗み見る。気づかなかったけど、案外タイプだ。
牛乳と食パンと特売のソーセージ。高校の夏休み、母親に買い物を頼まれた。気恥ずかしいし、売り場がどこだかわからない。「スーパーなんて来るんだね」。振り向くと、クラスの女子が笑ってる。「パンはあっち。私も買うから一緒に行こう」。これは相当気恥ずかしい。未来の「伴侶」を強烈に意識する。
後輩の女子に懐かれた。家庭が複雑で常に心が揺れている。高校の夏休み、幼なじみの彼女が誘ってくれた遊園地。後輩から「会いたいです」とLINEがあった。「いいよ、こっちは暇潰し。行ってきなよ」。ごめんと詫びて園を出る。なあ、その笑顔は本物か? 嫌だと泣いてくれれば、お前に告白できるのに。
小学生最後の夏。母に連れられ海に来た。7年前、父が溺れた場所だった。幼くて、あの日の記憶は曖昧だ。くるぶしまで水に触れ、唐突に私は気づく。二つ下に弟がいた。手を引いて、深みにはまり、助かったのは私だけだった。母が涙を流してる。愛する夫と息子を奪った娘のことを、母はずっと許せない。
娘と7年ぶりに海に来た。「ここでパパが死んだんだ」。来年は中学生。一度見せたいと思ってた。ママと2人で寂しくない? 「平気。あの夏もパパもよく覚えてない」。夫はあなたを助けようとした。弟の手を引き遊んでた、あなたのことを。女性らしさを増す娘を眺め、まだ許せない女の自分に絶望する。
だらしない僕に妻が呆れているのは知っている。大学で知り合って、結婚10年。あの頃、友だちも彼女のことを好きだった。二枚目で男らしく、奴に勝てる気がしない。けれども選ばれたのは僕だった。「放っておけない気がしたの」。そんな笑顔が蘇る。妻の気持ちが離れそうで、僕は未だに大人になれない。
春、同じ水泳部の同級生に告白された。高校最後の大会まで待ってほしい、と僕は言う。他校のライバルに今夏こそ負けたくない。必死で練習したけれど、感染症で大会は中止になる。「君はよく頑張ったよ」。夏の部室で彼女に優しく慰められた。お前の勝負に報いる番だな。僕は3か月遅れの答えを伝える。
男の子みたいな幼児だった。遊び相手はいつも彼。夏が来ると、隣町でカブトムシを探した。彼に誘われ、久々にあの場所に行ってみる。小さな林は綺麗な宅地に変わっていた。大事な記憶だったのだろう。彼が涙ぐんでいる。思い出はまたつくればいいよ。17歳の夏休み、私たちは、幼なじみから恋人になる。