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夏休み明けには転校だ。中学の仲間には黙ったまま。勝気な私に湿っぽいのは似合わない。ただ彼の顔を見たいと思う。何かにつけて口喧嘩。でも、いつしか特別な存在になっていた。消えちまえ、と言い合ったことを後悔する。外出の誘いを彼は渋々了承した。私は消えるよ。初恋の消えぬ思いを心に秘めて。
「一日だけつきあってあげる」。中学の同級生がそう言った。お前なんて消えちまえ――彼女とは口喧嘩が絶えない。その日、強引に連れ出され、夏の海辺を2人で歩く。「美少女とのデートを忘れるな」。笑って彼女は立ち去った。始業式、転校を知り、「消える」の意味を噛み締める。忘れるもんか、初恋を。
離婚した娘が孫と一緒に戻ってくる。少しだけ躊躇した。内緒だが、娘とは血が繋がらない。幼女を連れた妻と、私は初婚で一緒になった。「私とあなたも血縁なんてなかったじゃない」。仏壇の妻が笑ってる。それでも確かに私たちは家族になった。疲れた娘に腹一杯ご飯を食べさせよう。二合分の米を研ぐ。
「回答期限は始業式。もう一つ、私からも宿題ね」。高校の終業式の帰り道、幼なじみの彼女が笑う。これ以上、夏休みの課題を増やすなよ。「やる、やらないは勝手だけれど……さっき、先輩に告られた」。……へぇ、そうか。で、お前の「宿題」の選択肢は何さ。「私は単なる幼なじみ? 気になる異性?」
着信番号に驚いた。7年前まで交際し、結婚も考えた元カノだ。破局後は音信不通。躊躇いつつも電話に出ると、無言の向こうに男児の声がした。そうか、ママになったんだ。誤操作らしく、すぐに切れ、僕は迂闊に涙ぐむ。「パパ泣いてる」。幼い娘が微笑んだ。涙を拭い僕は思う。この宝物を大事にしよう。
7年前、求婚に躊躇した。彼に不満はなかったけど、まだ若いと感じてしまった。スマホを換えて、電話帳を眺める。消せない番号を無意識にタップした。「もしもし?」。彼の声の背後から「パパ誰?」と幼女が尋ねてる。無言で切って涙ぐむ。「ママ平気?」。幼い息子の手を握り、今を生きると心に誓う。
「私で練習させてあげます」。高校の後輩が小悪魔のように笑ってる。知ってるくせに、誰に片思いしてるのか。なのに気づかぬふりで「告って下さい、練習台になりますから」。ドSめ。……好きだ。「伝わらない」。お前が好き。「少しマシ」。大好きだ! 「……私もです」。そこでデレかよ、大悪魔め。
夏休みの生徒会室に2人きり。先輩が「こっくりさん、やってみるか?」と言い出した。YESとNOと五十音を紙に書き、向き合って10円玉に指をのせる。汗を拭った先輩が、私の名を挙げ「好きな人は身近にいますか?」と呟いた。知ってるくせに、臆病者め。私は指先に力を籠める。動きませんよ、告るまで。
働く妻が好きだけど、結婚7年、子どももほしいと感じてる。日用品を買いに出かけたドラッグストア。妻と気持ちが重なるまで、やっぱり待とう。そう思い、籠に小箱を忍ばせる。会計で、気づいた妻が赤面した。だってまだ早いんだろ? 俯く彼女が囁いた。「すいません、店員さん。それ会計いりません」
母に教わり浴衣を纏う。高校の同級生と交際し、3か月。浴衣デートは初めてだ。帰り道、キスした彼が、胸元に手を伸ばす。小さく拒むと「ごめん。まだ早いよな」と謝られた。ううん、あげてもいいなと思ってる。だけど、着付けができないんだ。私は次の予定を提案する。今度は2人でプールに行かない?