掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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半年前に別れた彼女が隣の席になった。高3のクラス替え。少し未練もあるから、やりにくい。視線を正面に向けてると「へえ。好み、変わらないんだ」と彼女が小さく呟いた。前の女子を眺めてたわけじゃないんだけれど。翌日、彼女は懐かしい髪型に変えてきた。前に加えて、今日から隣もポニーテール。

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高3に進級した。片思いしてた先輩と同じ教室だ。放課後、よくここから外を眺めていた。卒業直前、先輩は弓道部の同級生に告白する。意外だった。彼女との接点が思い浮かばず、なぜだろう、と泣きながら考えた。何気なく窓の外に視線を向ける。そうだったんだね……。校舎の裏手に弓道場がよく見えた。

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中2から5年連続。今年もうるさい幼なじみと同じクラスだ。「運命だねえ」と彼女が笑う。お前が近くにいるから恋の一つもできないよ。「あんたに彼女がいないの、私と関係ないでしょう」。大いに関係あるんだけれど。「どういう意味?」。ほかの子を好きになりかけても、うっかりお前と比べちゃうんだ。

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北国から上京したてで、大学の入学式への道すら迷う。会場の同級生はみんなキラキラだ。私は都会でやってけるかな。緊張し、背伸びしてると、隣の男子が書類を落とした。「悪りっす」。聞き慣れた故郷の言葉。早くもなんだか懐かしい。拾った書類を笑顔で返し、えふりこぎはやめにしようと心に決める。

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友達に彼女を紹介される。密かに交際していた高校時代の元カノだった。お互い初対面を装ってやり過ごす。その夜、久しぶりに彼女から電話があった。「彼には昔のことを黙っていてね」。わかっているよ。だけど正直、相手が「彼」で驚いた。「……私も最近自覚したんだ。自分が両性とも愛せるんだって」

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社会人2日目がやっと終わった。帰り道、就職3年目の彼と合流し、食事する。緊張で胃が痛い、と愚痴をこぼすと「俺に永久就職しちゃいなよ」。今どき、そういう口説き文句は流行らない。就活の苦労、知っているよね? 彼は苦笑いして頷きながら、言葉を変えた。「副業で、俺の嫁さんやってみない?」

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大学の先輩に憧れていた。僕が4年の年度末、飲み会帰りに2人になり、雰囲気で唇を重ねた。「最初は地方勤務なんだよね。頑張れ」。院に進んでいた先輩が、笑顔で僕の髪を撫でる。あれから1年。僕は本社に異動になり、入社式で懐かしい顔に再会する。あの時に言えなかった言葉を、今度こそ伝えよう。

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風邪をひきアパートで横になる。「一人?」。女友達からLINEがあった。YESと答えると、ほどなく玄関のベルが鳴る。お粥を作り、後片付けしながら「証拠隠滅。あとは半年続く彼女に頼ってね」と微笑んだ。お前が恋人だったらなあ。「そういうのは別れてから言いなさい」。うん、だから言ったんだけど。

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やらかしたとすぐ気づく。交際間もない彼女とのデート。右から腕組みをねだられたのに、無意識に左肘を出してしまう。左は元カノの定位置だ。その前の恋人は右に立ちたがり、元カノとの交際後もしばらく右肘を出す癖が直らなかった。彼女の目が潤んでる。今好きなのは君だけだ。僕は心の中で釈明する。

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はっきり自覚したのは1年前。大学に入って間もない兄が、恋人といるのを目撃した。胸がきゅっと痛くなる。わかってる。兄に恋するのは普通じゃない。想いを消し去りたくて、高校の同級生とつき合うが、続かない。受け入れられないのは覚悟の上だ。気持ちだけでも伝えよう。私は兄の部屋をノックする。

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