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「……ごめん」
「いいよ、お互い初めてだもん」
「お前が覚悟を決めてくれたのに」
「交際5か月。元幼なじみは一つになれませんでした」
「土壇場で、チビで弱虫のお前を思い出した」
「下半身が元気をなくした理由はそれか」
「笑うな」
「よかったよ」
「何が?」
「私の彼がロリコンじゃなくて」
「人恋しいので添い寝して下さい」。仲間内で飲んだ後、後輩が家までついてきた。密かにいいなと思ってたから、拒めない。僕の左腕に頭を預け、彼女はベッドで瞳を閉じる。シャンプーの甘い香りに理性が吹き飛びそうだ。酔った相手にことを急いては嫌われる。気取られぬよう僕は必死で寝たふりをする。
サークルの集まりで飲んだ後、先輩の家へついていった。人恋しいから添い寝して下さい。酔ったふりして囁いて、ベッドに倒れる。腕枕してくれる先輩が、そのうち寝息をたて始めた。イケメンに抱かれてみたいと思ったけど、肩透かし。私は体を縮こまらせる。どうしよう。これ、本当に好きになるやつだ。
押し付けられた高2の委員会。相方は内緒で交際中の彼だった。放課後、2人で校内を巡回する。屋上へと続く踊り場で、急に彼に抱き締められた。こらこら、委員会活動中だぞ。「我慢できねえや」。唇を塞がれて、私も彼の背中に手を回す。先生、やっぱり人選ミスです。務まりそうにありません、風紀委員。
同級生に惹かれてる。大学2年から同じゼミ。美人なのにラフな格好で、同性みたいにサバサバしている。「お腹減ったね」。講義を終えて彼女が言う。いつもの居酒屋寄ってくか。「誘ってくれるの、君だけだ」。笑顔を眺め、僕は決める。まだ「君だけ」でいられる今のうち、酔ったふりして打ち明けよう。
「思いやりがあるところ」。僕のどこが好きかと彼女に尋ね、そう言われた。僕の気変わりを、彼女は多分気づいてる。口に出さない僕に放られた牽制球。彼女も本当はわかっているはずだ。これは思いやりではなく狡さだと。言わなきゃならないことがある。涙ぐむ彼女を見つめ、僕は最後の言葉を口にする。
私のどこが好きかと彼に聞く。「思いやりがあるところ」。薄く笑って私は黙る。彼の気変わりを知っている。知っていることを薄々彼も感づいてる。はっきりと指摘しない私の振る舞いは「思いやり」と呼べるのだろうか。「君は僕のどこが好き?」。ふいに問い返されて私は答える。思いやりがあるところ。
昨夜、彼が事故死した。登校して担任から現場を聞く。彼の家とは反対方向。またあの子と会ってたんだね。半月前、彼の気変わりに感づいた。授業中の視線の先にはあの子がいる。すでに一線を越えたらしい。別れよう。昨日、泣いてそう決めた。何も知らないあの子が、愛憎混じった涙を流す私を見ている。
朝の教室。彼の机に花束が添えてあった。「明日言うよ」。昨夜の彼の台詞が蘇る。半月前、私から誘いをかけて彼と寝た。「お前を好きだ」という彼に、昨日、彼女と別れてほしいと懇願した。その帰路、交通事故に遭ったらしい。泣けない私は、何も知らずに泣き崩れている彼女の背中を、ぼんやり眺める。
彼が前に座る女子の姿を見つめてる。高3で同じクラスの隣になった。半年前、売り言葉に買い言葉で喧嘩別れ。悔やんでいるけど、彼は視線も合わせてこない。やっぱりもうダメなのかな。翌朝、私は半年ぶりに髪を後ろでくるっと束ねる。前の席の彼女と同じポニーテール。彼は私の想いに気づくだろうか。