掌編小説(140字)@単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』7月1日発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』7月1日発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』24年7月1日発売(予約受付中)。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。イラストはイトノコさん、まかろんKさん、NCG・春さんの作品です。
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GWに上京し、年上の彼の家を不意打ちした。半裸の綺麗な女性がいた。私は宿に逃げ帰る。「そういうヤツだったんだよ」。年下に慰められた。「良かったじゃん。別れを告げに行ったんだろ?」。好きな人が別にできた。でも躊躇いがまだ残る。同行してきた年下が私を抱き締め囁いた。「俺も好きだ、姉貴」

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「……どういうこと?」。茫然と一つ下の彼女は呟き、部屋の前から駆け出した。抜き打ちでGWに上京してきた。誤解だぞ、と追いかけようとして、年上に腕を掴まれる。「解いても後で深手を負わせる」。そうかな……。風呂上りの年上が、口づけながら囁いた。「何て言うの? 姉です、僕とできてます?」

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17歳の幼なじみとGWを消費する。私も彼も寂しいぼっちだ。街、海、山……。どこに行ってもカップルばかり。「ったく日帰り温泉までリア充だらけか」。最終日、風呂上りに彼がぼやく。全くだ。本当に爆発してほしい。腰に手を当て2人並んでイチゴミルクを飲み干した。お腹に沁みる。まんざらでもない。

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幸せ者は爆発しろ、と呪詛を吐く。17歳の幼なじみも「カップルばかり」と顔をしかめた。俺も彼女もみじめなぼっち。GWを持て余し、2人で映画を観に行った。「繁華街は失敗ね。明日は海か山に行こう」。だな。「渋めの温泉も静かかも」。それもアリだ。なあ、リア充どもはどんな連休過ごしてるのかな?

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朝焼けのさす客室で兄が微睡む。知らぬ間に異性と見てた。成人し、想いを抑えきれず、温泉宿に兄を誘う。昨夜並んだ布団で目を閉じた。覚悟を決めたはずなのに、体の震えが止まらない。「お早う」と兄が呟く。私はそっと涙を拭う。これでいい。男女にならなかったからこそ永遠だ。お早う、お兄ちゃん。

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「あら、お若いご夫婦」。温泉宿で女将が微笑む。宿帳に2人並んで氏名を書いた。山奥の一軒宿は連休中でも静謐だ。「家族風呂もありますよ」と薦められ、頬を染めた彼女が俯く。前はしょっちゅう一緒に入った。どうしよう、と僕は尋ねる。同姓の彼女が囁く。「まだ進んでいいか迷ってる、お兄ちゃん」

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GWの中華街は大賑わいだ。1年前、大学の初カノと食べ歩きした。「何でも本音で話し合おう」と約束したのに、嫌われることに怯えた僕は、何度も言葉を飲み込んだ。やがて僕らは破局する。今ならわかる。些末な相違は放置でいい。「あんまん食べたいな」。今カノが隣で笑う。じゃあ僕は好物の肉まんで。

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江の島が見えてきた。1年前のGWを思い出す。大学の同級生の彼がいた。お互い最初の交際だった。「何でも本音で話し合おう」と約束し、実践した。小さな嫉妬も口にして、やがて2人に溝ができた。今ならわかる。必要な嘘もあるのだと。「江の島初めて?」。並んで歩く今カレに、うん、と私は微笑んだ。

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ツテを辿って彼に会う。女子高の親友が、中学時代に一番心を許した相手だ。「あの子が惚れるの同性だぜ」。やっぱりそうか。彼女の好意を感じてる。私はすくんで動けない。力を貸すと彼が言う。親友と程よい距離を保つため、交際を偽装すると言ってくれた。私も百合だ。それで中学時代にいじめられた。

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女子高の親友に彼ができた。私の中学時代の同級生だ。「やっぱ知り合いか。元カレとか?」。ないない。でもいい人だよ。他人の気持ちがよくわかる。親友は「だよね」と頷いた。私は胸が痛くなる。実は昔、告られた。ハグされて、身を縮こまらせた私を見抜いた。「お前が恋する対象は、同性だよな」と。

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