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初日からバイト先の男性社員にちやほやされる。我ながら若い美人は得だと思う。隣の席は仕事に厳しい地味なアラサー。なんかあの人怖いです――怯えた顔で囁くと、イケメン主任に気遣われた。「大丈夫? 少し2人で話そうか?」。ちょろい、の言葉を呑み込んで、私は囁く。はい、できれば2人の密室で。
「お袋がお前に届けを頼んだ弁当、そっと渡してくれればよかったのに」。同じ高2の幼なじみにぼやかれた。「天然め。教室で手渡すから、また夫婦と茶化された」。気づかぬあんたの方が天然だ。おばさんに、想いは伝えてる。それで忘れたふりして代わってもらった。今日の弁当、中身は私のお手製だよ。
「また夫婦と冷やかされた」。家が隣の幼なじみが頭を掻く。昼、高校の教室に弁当を持ってきた。朝練なのに、お袋が寝坊して、届けてくれと頼まれたらしい。「交際もしてないのに、どこが夫婦っぽいんだろ」。わからねえか、天然め。「子作りしてそうに見えるとか?」。……そういう迂闊な発言とかだ。
川岸で彼に好きだと告げられる。皮肉だね、夢とうつつのはざまの場所で、秘めてた願いが叶うなんて。今日は川を渡る日だ。一緒に行こう、と囁きかけて言葉を呑む。7日前、高校近くの交差点で庇われた。跳ねられて、私は即死、彼は意識不明の重体だ。大好きだ。だから私は独り、三途の川を渡りに行く。
夢の少女は誰だろう。僕は7日も寝たきりで、まだらにうつつを垣間見る。その日、僕は川べりで、彼女に想いを打ち明けた。「私も好きよ」と少女は微笑み言葉を返す。「だから独りで渡ると決めたんだ」。待って、と叫んだところで目が覚めた。「被害者1人は生還です!」。看護師が、病床脇で叫んでる。
ミスキャンパスと同じじゃね?――Twitterの検証班の投稿がバズってる。ミスの私と、弟の指の写真が並べられ、指輪が同じと指摘された。「迂闊だった」。芸名の人気モデルの弟が頭を掻く。「ったく迷惑だよな、検証班」。もう姉弟でつきあってること公表しちゃう? ごめん、実は妬いた私の裏垢なんだ。
え、男いるの!? マジかよ――。姉ちゃんのインスタのコメント欄がざわついてる。大学祭でミスに選ばれ、フォロワーが急増した。「私の交際相手、みんな興味あるんだね」。そりゃあるだろ。だから匂わせなんて投稿するな。「えへ。細い指が愛おしくって」。姉ちゃんが、写真と同じ俺の手に、指を絡める。
誰かが「キモい」と言い始め、彼女はクラスで孤立した。でも微笑を浮かべ、登校してくる。率先し、私はいじめ役を引き受けた。表面的には誰一人加担しない。私は羞恥で死にたくなる。かつて、私もいじめを受けた。抗えず、いじめっ子の暴力よりも辛かったものがある。臆病な傍観者たちの静かな悪意だ。
よかったね――。斎場で、同級生に囁かれる。一人の女子がビルから落ちた。理由まではわからない。教室で彼女は私をいじめていた。死の前日、「ごめん」と密かに彼女に詫びられた。辛そうだった。それで赦せたわけじゃない。でももっと、赦せないものがある。私にも彼女にも、傍観者だったあなたたちだ。
高校の同級生とつき合い始める。ずっと好きだ、と僕は告げた。だからずっと好きでいてほしい、とも。「私も好きよ」と彼女は微笑む。「でもさ、君には元カノいたでしょ? 私にも元カレがいる」。ああそうか、と僕は気づく。未来の空手形には意味がない。大切なのは、今この瞬間、全力で好きなことだ。