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掌編小説(140字)@縦読み漫画(原案)配信中さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。絵はイトノコさんや春さんの作品。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。サブ(@syouhensub)、Pixiv(pixiv.net/users/95883938
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田舎から上京し女子大に進学する。地下鉄は迷宮だ。スクランブル交差点にも眩暈がする。LINEでこぼすと「すぐ慣れる」と笑われた。高校時代、SNSで知り合った男の子。「それよりバスの整理券、どう取るの?」。もしや前から乗ろうとしてない? 言ったでしょ。東京育ちの君には、地方大学無理だって。

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恋愛ドラマの撮影現場で気遣われる。私はヒロイン、彼は恋人役だ。触れるようなキスをされ、視聴者に失礼だ、と私は怒る。「……そうだな。お互いプロだし、見透かされるな」。再撮で、私は舌をしのばせる。秘密でつきあい半年前に破局した。視聴者もプロ意識も口実だ。元カレをまだ私は諦められない。

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「中途半端は視聴者に失礼だよ」。競演の若手女優が僕を睨む。恋愛ドラマの撮影現場。ラブシーンで触れるようなキスをした。「お互いプロでしょ?」。再撮で、彼女は瞳を潤ませ艶めかしく口づける。俺は台詞が飛びそうだ。極秘でつきあい、半年前に破局した。まだ俺は、ただの競演相手になれていない。

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女子高に進学し、同級生に告られた。「ほかに好きな人いる?」と尋ねられ、幼なじみの男子を思う。中学時代、向けられた淡い好意が照れ臭く、私、異性に興味ない、と言ってしまった。女の子に抱きつかれ、心地いい。本当に私、いけるのかも……。回答は1日待って。彼の気持ちをもう一度、確かめたい。

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高校帰り、最寄り駅で幼なじみと鉢合わせた。お互いにこの春から高校生。「いやあモテる」と彼女が囁く。「もう同級生に告られちゃった」。高校デビューか。好きにしろ。「あれ、妬かないんだ?」。妬かねえよ。お前、そっちかも、と言ってただろ。「そうだっけ?」。女子高のブレザー姿の彼女が笑う。

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大きな事件は何も起きず、心理描写が続いてる。小説の投稿サイトの不人気作者がまた迷子だ。更新ごとに厳しい意見を書き込んだ。ついに「アカウントを削除しようか」と漏らしてる。せめて完結させて、と叱咤した。鬱陶しいのに気になるのはなぜだろう。いい年して何者かになりたがってるパパみたいだ。

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退勤後、妻子が眠る真夜中に、小説サイトに投稿してきた。何者かになりたかった。でも読まれず賞も取れない。もうアカウントを消そうかな……。「全然上達せずに諦めるんだ」。フォロワーに笑われる。そっか、連載だけは完結させなきゃな。鬱陶しくて辛口で、誰よりも読み続けてくれた、1人のために。

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「噂通りだ。なぜまだ満開なんだ」と彼が言う。山奥の花が散らない一本桜。案内し、車で連れてきてもらう。半月前に別れを告げられ、私は泣いて拒み続けた。「やっぱり別れよう」。背後から囁かれ、振り向きざまに隠し持ってた刃を突き刺す。下に屍体が埋まってるからだよ。ちなみにあなたで5体目だ。

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別れ話を諦めて、彼女を車でデートに誘う。「伝説の一本桜が見たい」。俺も噂で耳にした。少女趣味にうんざりするが、好機かも、と考える。誰もいない山の中。花の散らない桜が一本、立っている。「土が特別なんだろうね」と微笑む彼女の背後に立つ。特別になるのはこれからさ。樹の下に屍体が埋まる。

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「昨日言い過ぎた」。高校で彼が詫びる。私もだ。つい感情的になっちゃった。喧嘩して、家でも腹の虫が治まらず、昨夜テレカを握り公衆電話を探し歩いた。もう9時過ぎ。家電できない。いつかみんなが電話を持って、時間を気にせず話せればいいな。帰宅して、毛布を手繰り、怒りをなだめ眠りに落ちる。

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