【34】もっとも「回転トルネード投げ」は徐々に標準化し、クラスの王座は一月天下となったが、それでもかまわなかった。その頃にはもうクラスの誰もがぼくのことを「テディー」と呼んでくれるようになっていた。ジェフが言っていた通りだった。仲間は名前で呼ぶのだ。 #向山貴彦 #金網の向こう
【33】「サムライ投げ」とか「ニンジャ投げ」と命名されたその投げ方をぼくはクラスの男子にだけ伝授した。そのことでうちのクラスは一躍「４スクエア」の無冠の帝王となり、ぼくはしばらくの間「４スクエアの王」として名を馳せた。 #向山貴彦 #金網の向こう
【32】ぼくの日本の小学校ではこのゲームは「水爆」という名前で以前から流行っていた。技も研究され尽くしていて、究極奥義「回転トルネード投げ」を男子は全員身につけていた。初心者だらけのペリースクールでいきなり披露した「回転トルネード投げ」は衝撃を起こした。 #向山貴彦 #金網の向こう
【31】でも、ここでも日本に助けられる。当時ペリースクールで昼休みに流行し始めていたのが「４スクエア」というボールゲーム。アスファルトにチョークで「田」の字を書き、それぞれの枠に一人が入って、互いの枠にボールをワンバウンドさせる遊びだ。 #向山貴彦 #金網の向こう
【29】このおかげでぼくはクラスの中で認められ、徐々にクラスに友達が増えていった。おとなしめのギークのスウェイジーや、コリアンの美少女のリン、それに銃器マニアのスティーブなど、なんともいえないメンバーだったが、それでもクラスに馴染めてほっとしていた。 #向山貴彦 #金網の向こう
【28】しかもあまりちゃんと訳せなかったので、半分ぐらい創作した。この「翻訳漫画」が学校中で話題となり、昼休みにチャンピオンの山に人が群がるようになった。途中からは職員室のコピー機で十部くらいコピーして、学校で回し読みをするようになっていた。 #向山貴彦 #金網の向こう
【27】友達を増やすためにどうしたらいいか考えて、日本の漫画を翻訳することを思いついた。当時一番人気だった「週刊チャンピオン」をぼくも買っていたが、日本語が読める子はクラスにいない。だからチャンピオンの人気漫画のコマを修正液で塗りつぶして、英語で書いた。 #向山貴彦 #金網の向こう
【26】次の日からジェフと一緒に行動した。毎日何か理由をつけて電話代をたかられたが、それくらいなら安いものだった。弁当もおかずのソーセージを中心にとられたが、代わりに毎回ジェフが持ってきている「Cup O’ Noodle」のシュリンプ味を分けてくれる。 #向山貴彦 #金網の向こう
【25】「ガムはトライデントかインディアン印だ。バブリシャスはゲイだから噛むな」「チョコバーはここでは通貨だから、ミニサイズのやつを持ち歩くこと」「あとスニーカーは磨くな。貧乏に見えないとまた目をつけられる」そんなジェフのアドバイスを全部頭に叩き込んだ。 #向山貴彦 #金網の向こう
【24】「ガムは噛んだ方がいいが、中学生が通ったらこうやって隠せ」そう言ってジェフは噛んでいたガムを近くのテーブルの下に貼り付けた。「中学生が見えなくなったらもう一回食っていいから」当たり前のようにテーブルの下からガムをはがして、ジェフはそれをまた噛む。 #向山貴彦 #金網の向こう
