掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「姉」から最後の電話があった。「ごめんね。弟が浮気して」。元カレとは高2まで4年間もつきあった。彼の姉とも仲良くなり、姉妹みたいに2人で出かけることさえあった。一人っ子だから、信じられるきょうだいがほしかった。泣けてくる。彼の裏切りは許せない。大切な「お姉ちゃん」を奪ったことも。

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彼女は一昨年の新卒だった。会社帰り、躊躇う彼女を食事に誘い、徐々に距離を縮めていった。「貴方と結婚できて幸せよ」。俺も同じと頷いて、5年前を思い出す。まだ彼女は大学生。あの頃俺は大人の女優に本気で恋した。出演は5本だけ。引退作ではドレス姿を披露した。花嫁が、無垢を装い俺に微笑む。

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幸せだよ、貴方と結婚できて。「俺もだ。花嫁姿に惚れ直した」。式場で囁き合う。勤務先の5歳上。性格も容姿も優れているのに、なぜか彼女がいなかった。恋愛に臆していたけど口説かれて、私たちは結ばれる。幸福が続くように。過去が絶対バレないように。貧しかった大学時代、大人の動画に5本出た。

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「君、ラノベや漫画を真に受けたんだ」。高校の先輩がセーラー服で苦笑する。高1で立候補した生徒会。役員は全員一軍、恋愛もできるかな、って思いました。「現実は憎まれ役と雑用係。一緒に頑張ろう」。微笑んだ先輩が、書類の山と格闘してる。2人きりの狭い部屋。……先輩、本当に恋も無理ですか?

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「生徒会、漫画やラノベと違うんですね」。高1の後輩がぼやいてる。文化祭の報告書は締切間近。2年の私と彼の2人で追い込み作業だ。どんなの想像してたのよ? 「みんなから一目置かれ、ラブコメみたいで」。むしろ憎まれ役だって。さ、早く終わらせ一緒に帰ろう。駅前でパフェぐらい奢ってあげる♥

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「好きな子を諦めた? まあ次があるって」。高校の帰り道、僕の肩を彼女が叩く。サバサバ系の同級生。お前が男だったら親友なのに、と僕は呟く。「えー、それ嫌かも」。彼女は笑って立ち去った。往生際が悪くって、自分が心底情けない。想いは全く届いてない。もう本当に次へ行く。諦めのステップに。

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次があるって――。高校帰り、腐れ縁の同級生の肩を叩く。好きな子を諦めたらしい。「相変わらずサバサバだな。……でも次行くよ」。うんその意気だ。「感謝。お前が男だったら親友だ」。笑って別れ俯いた。女子だよ、私は。臆病で、サバサバを演じてる。最後の言葉に泣けてくる。次も私じゃないんだね。

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強烈な頭痛がした。多分脳出血だ。大昔、医学部時代に教わった。卒業間際に中退し、転々と職を変え、世界を放浪、酒に溺れた。不摂生のツケだから、突然死に悔いはない。高校来の友がいる。唯一の友だ。在学中に結婚し、俺は自暴自棄になった。霞む意識で40年を振り返る。言えなかったな、好きだって。

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友人が突然死した。高校から40年のつきあいだった。昔は一緒に馬鹿をした。みんなが大人に変わる中、ヤツは飽きると職を変え、世界中を旅してた。半年前に酒を飲み、自由でいいなと呟くと「お前みたいに俺も所帯がほしかった」と薄く笑った。相当酔っていたのだろう。あの夜、強く肩を抱き締められた。

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先輩、同級生のあの子と仲良くですよ――。「え?」。やっぱり気づいてないんですね、私と彼女の片想い。2か月前、彼女に「宣戦布告」した。互いに牽制し合い、彼女はみるみる痩せていく。私も痩せて受診した。諦めたくない。でも諦める。思わぬ病気が見つかった。明日から入院。多分生きて出られない。

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