掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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5年続いた彼女と別れた。お互いに惰性を嫌った。彼女のいない日曜日。SNSで時間を溶かす。タイムラインにクスっと笑い、腹を立て、同情する。全部うわべだ。彼女のLINEは端的で、無駄がなく、それでも心を揺さぶられた。僕らはどこで間違えたのだろう。投稿は星の数ほどあるけれど、SNSに答えはない。

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話し合って彼と別れた。交際5年。すでに惰性になってると、2人とも気づいてしまった。日曜日、誰もいない一人の部屋でスマホを切る。とっておきの缶ビール、積んだままのミステリー。軽く酔い、無心に活字を追い続ける。彼からのLINEも電話もない時間。その豊かさがほろ苦く、なぜか涙が止まらない。

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火葬場で、兄弟を見送った。高校に登校中、電車に跳ねられたのだ。彼女が泣いてる。やっぱり好きだったんだ、と感じつつ、兄貴の代わり、俺じゃ駄目か、と言ってみる。一瞬躊躇し、彼女は俺を受け入れた。絶望する。俺たちはよく似た双子だ。時々入れ代わって登校した。死んだのは、俺のふりした弟だ。

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事故で少女が運ばれてきた。娘と同じ年頃だ。救急車の隊員が「加害者の配送業者も壁に衝突、意識不明。隣町の病院に搬送中」と説明する。書類の社名がちらりと見えた。懸命に医師が少女の治療にあたる。看護師の私も救う。この子さえ飛び出してこなければ、愛する夫がハンドルを誤らなかったとしても。

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急患を受け入れる。配送業の中年だ。仕事中に少女を跳ね、自らも壁にぶつかった。隣町の病院に搬送された被害者同様、意識不明の重体だ。「……あの、先生」。看護師の囁きに、メスを握った手が止まる。駆けつけた男の子どもが泣いていた。――よし、始めよう。絶対助ける。被害者が、俺の愛する娘でも。

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平日休みが重なって、前夜から彼のベッドで抱き合った。体育の日だし、何かしようよ。囁く私は抱き締められる。「今はスポーツの日なんだ。いい汗かこう」。もう、と呆れたふりして身を委ねる。彼とは本当に相性がいい。ねえ、スポーツの日は毎年変わるの。今年は実は14日。4日後も、いい汗かこうね❤

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平日休みが彼女と重なる。昨夜、うちを訪れて、朝までベッドで交わった。「せっかくの休みでしょ。何かしようよ」。例えば? 「体育の日だから体育とか?」。僕は彼女を抱き寄せる。「こら、体育って言ったじゃない」。もっと楽しく過ごせるように、今は名前が変わったんだ。スポーツの日に汗かこう♥

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高校帰り事故に遭う。病院で目覚めると、左脚を失くしていた。号泣し、天を呪い、塞ぎ込む。それでも半年かけて義足で歩けるようになってきた。彼と以前のようにはデートできない。「いいよ。健気なお前が気の毒で、放っておけない」。微笑む彼への熱がひく。恋人を哀れむような恋人は、私はいらない。

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半年前、彼女は左の脚を失った。高校の通学路での事故だった。塞いでいたが、最近、義足で歩けるようになってきた。「振っていいよ」と繰り返され、僕はそのつど首を振る。デートも以前のようにはできない。「まだ私を好きでいる?」。甘やかな感情は今はいい。健気なお前が気の毒で、放っておけない。

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親友だと思っていた。高校近くの公園で、クラスの男子に告白した。よく彼女と話しているのは知っている。私たち3人は同級生だ。私も彼女と仲がいい。でも交際の気配はない。「ごめん、彼女を好きなんだ」。彼の言葉に私は俯く。嫉妬で耳まで赤くなる。親友だと思っていた。異性だけれど、彼女は彼の。

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