掌編小説(140字)@単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』7月1日発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』7月1日発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』24年7月1日発売(予約受付中)。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。イラストはイトノコさん、まかろんKさん、NCG・春さんの作品です。
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マジかよ、あいつ。高2の夏休み、街で男連れの彼女と出くわした。まだ交際3か月。終業式の日に口喧嘩し、音信不通が続いてる。俺は隣の女子の肩を抱き、無言で彼女とすれ違った。「別れたくないくせに」。手を振りほどき、笑う女子にたしなめられる。「早めに謝らないと手遅れになるよ、お兄ちゃん」

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ミカスケ(イトノコ)さんがフリーイラスト連投です(#^.^#)
以下にまとめておきまーす♪
ミカスケ(イトノコ)さんの固ツイに、使用上の注意点も書いてあります(*´▽`*)

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一つ下の都会っ子を慰める。高校の女子に失恋し、祖父母の田舎に逃げてきたそうだ。仕方ない。彼の手をとり野山を駆け、小川で遊ぶ。笑顔が戻った7日後、もう平気だねと私は言う。「また会えますか?」。いつかはね。12年前、5歳の私は小川で溺れた。幼かった弟の成長に目を細め、私は再び天に帰る。

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「死ぬの?」。川べりで少女が笑ってる。失恋した高1の夏、祖父母の田舎を訪れた。「多分相手は平気だけど、親が悲しむよ」。以来一週間をともにして、僕は元気を取り戻す。帰京の日、彼女は消えた。「来ていたか」と祖父が微笑む。僕は気づく。5歳で溺れた一つ上の姉がいた。明日は彼女の十三回忌。

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優しさに惹かれたはずだった。高校の一つ先輩。思い切って告白し、想いは叶う。交際して初めての夏休み。デート中、先輩の同級生と鉢合わせる。「暑いから気をつけてな」。汗まみれの彼女を気遣う彼を見て、私は胸が苦しくなる。無防備な優しさは、密かに横恋慕してる彼女に酷だ。何より私を傷つける。

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よく行く近所のスーパーで、高校の同級生と出くわした。夏休み、彼も親から買い物を頼まれたらしい。「何がどこにあるのかわからない」と戸惑ってる。勝手知ったる店内だ。並んで歩き、案内する。将来誰かと結婚したら、こんなふうになるのかな。彼の顔を盗み見る。気づかなかったけど、案外タイプだ。

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牛乳と食パンと特売のソーセージ。高校の夏休み、母親に買い物を頼まれた。気恥ずかしいし、売り場がどこだかわからない。「スーパーなんて来るんだね」。振り向くと、クラスの女子が笑ってる。「パンはあっち。私も買うから一緒に行こう」。これは相当気恥ずかしい。未来の「伴侶」を強烈に意識する。

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小学生最後の夏。母に連れられ海に来た。7年前、父が溺れた場所だった。幼くて、あの日の記憶は曖昧だ。くるぶしまで水に触れ、唐突に私は気づく。二つ下に弟がいた。手を引いて、深みにはまり、助かったのは私だけだった。母が涙を流してる。愛する夫と息子を奪った娘のことを、母はずっと許せない。

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娘と7年ぶりに海に来た。「ここでパパが死んだんだ」。来年は中学生。一度見せたいと思ってた。ママと2人で寂しくない? 「平気。あの夏もパパもよく覚えてない」。夫はあなたを助けようとした。弟の手を引き遊んでた、あなたのことを。女性らしさを増す娘を眺め、まだ許せない女の自分に絶望する。

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だらしない僕に妻が呆れているのは知っている。大学で知り合って、結婚10年。あの頃、友だちも彼女のことを好きだった。二枚目で男らしく、奴に勝てる気がしない。けれども選ばれたのは僕だった。「放っておけない気がしたの」。そんな笑顔が蘇る。妻の気持ちが離れそうで、僕は未だに大人になれない。

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