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縁側で夫がビールを飲んでいる。高校生の息子を叱り、親子喧嘩になっていた。初めて組み伏せられたのが、よほどショックだったのだろう。少し前まで息子は全く歯が立たなかった。歳をとったね、あなたも私も。「……あいつ強くなったな」。呟く夫の隣で、私もグラスを傾ける。今夜のビールはほろ苦い。
「制服のJKと遊ばない?」。街で少女に誘われた。七つ下の妹に少女が重なる。去年の高卒直後、妹は年上に捨てられ心を病んだ。「制服だけが魅力だった」。そう嘯いた元彼は、同じことを繰り返していたらしい。少女の手をとりカフェへと向かう。もうやめな。僕は静かにそう諭す。こんな誘いは自傷だよ。
「女子高生だよね?」。制服姿の私は頷く。男はみんな同じだ。年上の彼に捨てられた。私より年下の後輩に乗り換えられた。以来、街で手あたり次第に男を誘う。制服という記号に昂る男たちへの復讐だ。「じゃ行こう」。若い男に手をとられる。失恋した卒業式から早2年。20歳の私はまだ制服を身に纏う。
漫画の公募に落ち続け、入賞時には30歳になっていた。10年で3人の彼氏に振られ、今もバイトを続けてる。ある日、街で美大時代の親友を見た。20歳で絵画賞を取り、デザイン会社に就職。結婚して三つ子に恵まれ、主婦になったと噂で聞いた。私には漫画以外何もない。3児に微笑む綺麗な彼女に嫉妬する。
美大時代の親友が漫画家としてデビューした。在学中、私は絵画で賞を取り、彼女は留年寸前だった。就職先のデザイン会社で夫と出会い、三つ子を授かる。頼れる親は遠方で、私は仕事を諦めた。「ママ、この漫画面白いのになぜ泣くの?」。3人の6歳児が私を見る。涙を拭い、並んで一緒に雑誌をめくる。
「プリクラ撮りたい」と彼女がねだる。高2で僕の二つ下。夏のコンビニバイトで告られた。今は彼女を好きだけど、破局した前のバイトの同い年にも未練が残る。個室で彼女にキスされた。どんな顔で出て行こう。ゲーセンの女性バイトが醒めた瞳で僕らを見てた。僕は辞めたが、続けてたんだ、アイツまだ。
「いいよ俺」。ためらう彼をプリクラに押し込んだ。二つ上の大学生。夏のコンビニバイトで一緒になり、告白した。「ハグは別の場所でして下さいね」。ゲーセンの若い店員さんにたしなめられる。彼は赤い顔で俯いた。大丈夫。気づかれたのは半分だけだよ。私から最初のキスをあげたことまでバレてない。
2匹の魚が見えたんだ。堤防から手を伸ばし、5歳の僕は海に落ちる。助けようと飛び込んだ、ママは大きな怪我をした。あの夏からもう7年。最近やっとパパとの仲が戻ったね。弟がほしかった。2匹は兄弟に見えたんだ。天国からママを見つめてる。夢を叶えてくれてありがとう。いるよ、お腹に、僕の弟。
7年前、5歳の息子が海に落ち、助けようと堤防から飛び込んだ。私は足と腰の骨を折り、今も定期的に受診してる。また夏が巡ってきた。守れなかった命を思い、私はえずく。「そろそろ前を向く時期です」。レントゲンのオーダーを取りやめて、医師が微笑む。「息子さん、天国でお兄さんになるようです」
「朝ごはん、裸エプロンでお願いします」。大学の三つ下の彼が笑う。夏休みに泊りに来て、終えた後、お互い寝落ちし、朝を迎えた。この変態。恥ずかしいから絶対嫌だ。頭を小突き、ベッドを離れ台所に立つ。……変態はひょっとして私の方かも。上だけ纏った緩いシャツ。大好きな彼の匂いをそっと嗅ぐ。