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掌編小説(140字)@単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』7月1日発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』24年7月1日発売(予約受付中)。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。イラストはイトノコさん、まかろんKさん、NCG・春さんの作品です。
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春、同じ水泳部の同級生に告白された。高校最後の大会まで待ってほしい、と僕は言う。他校のライバルに今夏こそ負けたくない。必死で練習したけれど、感染症で大会は中止になる。「君はよく頑張ったよ」。夏の部室で彼女に優しく慰められた。お前の勝負に報いる番だな。僕は3か月遅れの答えを伝える。

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男の子みたいな幼児だった。遊び相手はいつも彼。夏が来ると、隣町でカブトムシを探した。彼に誘われ、久々にあの場所に行ってみる。小さな林は綺麗な宅地に変わっていた。大事な記憶だったのだろう。彼が涙ぐんでいる。思い出はまたつくればいいよ。17歳の夏休み、私たちは、幼なじみから恋人になる。

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泥にまみれて野山を駆けた。僕も彼女も一人っ子。生まれた時から同い年のきょうだいみたいな感覚だった。中学生になり、彼女はセーラー服を身にまとう。ふざけてもたれた肢体の丸み、パンチではなく頬を染めるその反応。そうか、僕らはもう中性な存在ではいられないんだね。夏、幼年期の終わりを知る。

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大学帰りに一人でカフェへ。後から偶然、同性の後輩も来店した。先日、私と彼女は同じ男子に秋波を送られていると気づく。酔っ払った後輩が「あんな不誠実な男とつきあう相手の気が知れません」とくだをまく。本当だ。「先輩、やめたほうがいいですよ」。うん……ねえ、あなたは当然、やめたんだよね?

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先輩に偶然会った。大学近くのカフェ。離れて飲むのむ不自然で、仕方なく女2人でカウンター席に並んで座る。酔うと彼の悪口で意気投合。「私とあなたに同時に粉かけるとかありえない」と先輩。本当に酷いです。いいなと感じた自分が馬鹿みたい。「だね。で、諦めるの?」。……先輩はどうなんですか?

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夏休み明けには文化祭。自主登校で準備中、先輩が顔を出す。「企画書点検したくて」。生徒会室に2人きり。夏服が汗ばむのを自覚する。暑さだけが理由じゃないと悟られるかな。盗み見た先輩も、汗を拭ってる。暑いですねと囁くと、先輩が俯いたまま呟いた。「汗ばむ理由、お互いちゃんと考えようか?」

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元彼が駆けこんできて面食らう。高校近くの橋の下。彼も傘を忘れたらしい。私には触れる勇気もないくせに、グラビアにうつつを抜かしているのに辟易した。ヘタレが直ればいい奴なのに、と別れたことをちょっぴり悔やむ。私はわざと腕組みする。やり直す? 半年で、胸の辺りも随分成長したんだけれど。

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高3だった去年夏、部活の後輩と海に行った。「受験、頑張って下さいね」。告られるかなと思ってたけど、彼女は作り笑顔で手を振った。僕は猛勉強して志望校に合格する。今年は彼女が受験生。まだ気持ちが変わってないなら、今度は僕が黙って背を押すよ。バイト先の予備校で、今日から彼女は夏期講習。

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幼なじみに「後輩から告られた」と相談された。蓼食う虫だねえ、と私は背を押す。後輩と並んで帰る彼の背を、放課後の教室からぼんやり眺める。「お前のことは何でも知ってる」。そう言って、笑う彼に甘えてた。ぎゅっと胸が痛くなる。あんたも知らないことができたよ。私って、こんなに嫉妬深いんだ。

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職場の後輩とつきあい始めて3か月。今春異動してきた彼女には、上司と不倫していた噂があった。ある日、偶然彼女の手帳を見てしまう。半年前の土曜日に、秘湯の地名。噂は本当だったんだ。僕は一軒宿に予約を入れる。素知らぬ笑顔が殺したいほど愛おしい。思い出の地で、僕は彼女の全てを上書きする。

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