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掌編小説(140字)@単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』7月1日発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。単行本『ごめん。私、頑張れなかった。』24年7月1日発売(予約受付中)。投稿が原案の漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)。Amazonアソシエイト。イラストはイトノコさん、まかろんKさん、NCG・春さんの作品です。
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いつかお前を手放すために、5年前から全力だ。早起きして朝食と弁当をつくり、仕事が終わると飛んで帰る。今は精一杯支えてやる。だから、自分の力で生きていけるようになるんだぞ。「おやすみなさい。仏壇の水は換えといた」。早く寝ろよ、と俺は言う。17歳の一人娘は、遺影の妻にますます似てきた。

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3年前、高校生だった妹にキスされた。不意打ちだけど、彼女の気持ちは知っていた。僕だって、お前のことが大好きだ。でも、この先には未来がない。飲み込んだ想いを消し去りたくて、職場の後輩と交際する。週末は僕らの結婚式。準備を進める無垢な新婦の笑顔がつらい。僕はまだ、妹のことを愛してる。

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七つ上の兄が結婚する。「お前もいい男見つけろよ」と頭を撫でられた。3年前の高校時代が甦る。想いを抑えきれなくて、不意打ちのようにキスをした。あの時も、私をハグし、兄は同じ台詞を囁いた。探して探して、見つけたよ。私の答え。あなたが別れて道を踏み外すまで、お兄ちゃんだけを待っている。

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高校の先輩に打ち明けられた。少し時間がほしいです、と答えを濁す。最近、気になっている相手がいる。中学まで全く異性を感じなかった幼なじみ。この思いは恋なのだろうか。先輩は優しくて、私を大事にしてくれそうだ。頷く前、一度だけ幼なじみに確かめよう。あなたにとって、私は女の子なんですか?

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初めて彼女と寝たのは半年前。体の相性ってあるんだな、と僕は思う。以来毎日重なった。世界は瞬く間に狭くなる。このままだとお互い駄目になる。話し合って別れを決め、確かめようと最後に交わる。喘ぐ彼女と醒めた僕。今さらながら誤解に気づく。あれほど気持ち良かったの、体ではなく心だったんだ。

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深夜まで彼の家で話し合い、別れを決めた。互いに「本当の理由」は言葉を濁した。最後に一度と彼が言い、私は頷く。別れる彼女を平気で抱く。こういうとこだよ、あなたの一番いけない点。吐息を漏らし、いや、最低なのはこっちだな、と私は思う。とっくに熱は冷めたのに、快楽を失うことだけまだ怖い。

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恋人の存在を仄めかした。サッカー部の女子マネの、取り繕った笑顔が辛い。高校で出会い2年半。お前は同志か戦友なんだ。交際し、もし恋が終われば、俺は喪失感に堪えられない。お前の好意は知っている。俺だって大好きだ。なあ、もう少しだけ猶予をくれないか。架空の「恋人」には振られておくから。

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「マネジャー、いつものよろしく」。サッカー部の彼が言う。明日は隣の高校との練習試合。張り切ってるね、と笑うと「彼女が来るかもしれなくて」。相変わらず私は間抜けだ。あなたも好きでいてくれるかなと思ってたよ。夜、凍らせる檸檬を輪切りにしながら涙ぐむ。しぶきが目に飛んだからに違いない。

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一年前、唐突に告白された。彼女と僕、彼女の親友は、同じ大学の仲間だった。いつになく彼女は強引で、押し切られる。交際間もなく、難病を患っていると知らされた。昨夜、病床で彼女を看取る。「あなたは優しく残酷だよね」と彼女は笑った。「気づいていたよ、あなたがずっと親友のことを好きだって」

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元カノが忘れられないんだね。そう呟くと、彼は黙った。同じ大学の私たちは、仲良しの3人組。彼女が先に打ち明けて、2人は先々月まで交際してた。私が告白したのは昨夜のこと。彼女の名前を見つめて私は思う。あなたは狡い。競うことすらもうできない。線香の煙が目に染みる。今日は彼女の四十九日。

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