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球場に妻と2人で足を運ぶ。高校野球の県予選。マウンドの息子の姿にかつての自分が重なった。俺も高校球児で妻は女子マネ。それがつきあうきっかけだった。「また思い出補正ね」。妻が隣でくすくす笑う。何だよ、実際お互い野球部だったろ? 「そうだけど。万年補欠で、あなたは試合で投げてません」
「相変わらずだね」。ハンカチで、幼なじみが俺の口を拭ってくれる。高校の帰り道、一緒にアイスを食べた。「子どもみたいに食べ散らかすと、ずっと彼女できないよ」。放っておけ。お前だって世話焼くたちだろ? いるんだよ、そういう女子も。内緒だけど、半年前から三つ上の女子大生とつきあってる。
高校の同級生を花火に誘い、断られた。落ち込む俺に後輩が微笑みかける。「大輪の花火みたいな美少女ですよね」。俺には高嶺の花だった。その夜、後輩が線香花火を持ってくる。慰めのつもりだろう。彼女の顔が闇夜に浮かぶ。これまで気づかなかったけど、いいな、儚い線香花火も、ささやかな優しさも。
高校の先輩が、同級生の美少女を花火に誘い断られた。「俺には高嶺の花だった」と凹んでいる。じゃあ2人で残念会しましょうか。その夜、線香花火を並んで握る。「いいな。こういう小さな輝きも」。先輩にはそっちの方が向いてます。大輪の花ではないですが、身近にいますよ、線香花火みたいな後輩が。
仲いい男子を海に誘って断られた。中2の終業式。伝えてないけど、夏の終わりに転校する。拒んだのは照れ隠し? それとも本当に気がないせい? 独り歩いた夏の浜辺で貝を拾う。誘いで最後と思ってた。けれど、私は案外、往生際が悪いらしい。新住所を貝に書き、夏休みの教室の、彼の机にしのばせる。
「夏休み、海でも行こうか?」。中2の終業式、腐れ縁の女の子に誘われた。照れ臭く、行かねえよ、と僕は答える。本当は彼女が大好きだ。謝ろうと迎えた2学期、彼女の姿は消えていた。転校したと教師が言う。悔やむ僕の机の中に、住所が書かれた貝が一つ。「独りで行ったよ。いつか一緒に行きたいな」
出産し、妻は変わった。互いにあんなに夢中でいたのに、今の妻は子どもしか見ていない。もちろん僕も我が子が可愛い。だから必死に働いて、生活費を稼いでる。今日も深夜に帰宅すると、子どもを抱いて妻が寝ていた。部屋を片付け食器を洗い、ベッドで独り考える。僕だって、変わらず愛してほしいんだ。
大企業の正社員、しかも私を溺愛してる。夫と結ばれ3年経った。買い物に夫婦で出かけ、元彼を思い出す。困った人を放っておけない性格だった。自分だけを見てほしくて、私はそれを寂しいと感じてしまった。涙ぐんでる迷子の幼児に今日も夫は気づかない。大丈夫かな……。私は膨れ始めたお腹をさする。