掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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あのさ、と僕は言いかけて、口ごもる。「何よ?」。高校の同級生の彼女が答える。夏服に透けたブラ、サイズ大きくなったと思うんだけど……? 「ったく、何見てるのやら」。ごめん、配慮に欠けた。忘れてくれ。「最初の夏だし、君次第」。うん何が? 「決まってるでしょ、確かめられるかどうかだよ」

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高校帰り、彼が前を歩く同級生の背中を見ている。「……あの子、白からピンクに変わったな」。うわ最低。透けたブラを観察ですか。「見たんじゃなくて見えたんだ」。彼が慌てて釈明してる。ふうん、そばにいるのに、私のは見えないんだ。「白のままじゃん」。あのね、サイズがさ、CからDに変わったの。

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「旦那さん、いい男だから、おまけしとくよ」。魚屋さんが私に笑う。兄とはしょっちゅう夫婦に間違われる。22歳と29歳。年齢的にもおかしくない。ね、お兄ちゃん。いっそこのまま本当の夫婦になっちゃわない? 伝えてないけど、もう5年も意識している。両親は再婚同士。互いの連れ子は結婚できるよ。

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「新婚さん?」。八百屋さんにそう言われる。「そうなんです」。七つ下で大学生の妹が、俺に腕を絡めてきた。おいやめろ。その気にさせて、おまけもらうのあざといぞ。「いいじゃない。林檎一つぐらい」と笑われた。あとな、兄もその気にさせるなよ。両親は再婚同士。俺たちは血の繋がりがないんだぞ。

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私の気持ちも伝わっていると思うけど、高校の同級生はまだ告白してくれない。私は勇気を絞り出す。夏休み、彼氏とあちこち遊びに行こうと思ってるんだ。「……そういう相手がいたのかよ」。いないよ、今は。あとはあなたの勇気次第。ねえ、どうする? 夏休みまであと3日。告って願いを叶えてくれる?

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高校のクラスの女子がにやけてる。バレバレだとは思ってるけど、まだ告白はしていない。お前、何かいいことあったのかよ? 「もうすぐ彼氏と過ごす初めての夏休み」。僕は絶句し、うなだれる。そういう相手がいたのかよ……。小悪魔みたく笑った彼女が、僕の顔を覗き込む。「あと3日だよ、告白期限」

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無償の愛ってあるんだな、と私は驚く。これまで誰かを愛した時、常にどこかに打算があった。好かれたいと思って好きだと囁き、返してほしくて何かを贈った。でも、打算とは無縁の愛もあるんだね。「そうだな。お前と同じで俺も初めて気がついた」。隣の夫が目を細める。私の腕で小さな命が泣いている。

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姉の家で幼い甥にキッズセットをねだられる。一人向かったハンバーガー屋。パートで働く高校時代の元カノと再会した。喧嘩別れは卒業間際の10年前。その後、親が離婚し、母と同居と噂で聞いた。実はずっと未練があった。もう一度と言いかけて、あの頃と違う姓の名札に気づく。そうか、結婚したんだね。

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高卒後の10年は散々だ。卒業間際、大好きな元彼と喧嘩別れ。直後に父が浮気し、離婚した母の望みで姓を変えた。大学では就活に失敗し、今もハンバーガー屋でバイトを続ける。ある日、店内で忘れられない元彼を見た。もう一度やり直せないかな……。ご注文は何ですか? 「持ち帰りで、キッズセットを」

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同級生と交際し、3か月。せっかちで心配性の彼女が愛おしい。「話したい」。今夜も彼女のLINEが届く。じっくり悩みを聞かないと。そう思い、2時間で高校と塾の課題を片づけた。返信すると「何でもない」。彼女の態度は素っ気ない。「大らかさが好きなんだ」と告ってくれた。彼女の悩みがわからない。

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