掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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高3の男子がまた保健室にやってきた。「先生、半年前から微熱があるんだ」。君、平熱。八つ下だし健康体だよ。探しに来た担任に連れ出されながら「マジで胸も苦しくて」と呟いてる。ほら、手を焼かせない。苦笑した私の同期の担任が、そっと目配せする。そうか、今日で6か月だ。彼との秘密の交際も。

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兄貴のような担任に高校の保健室から連れ出される。「またサボりだろ」。違うぞ、本当に胸が痛くて微熱があるんだ。「そうなのか? 2年の冬から続いてるなら、検査で原因調べてもらえよ」。いや、理由はわかってるんだ。この半年、彼女がさらに綺麗になっただろ。憧れてるんだ。8歳上の養護教諭に。

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「君とは絶対つきあえない」。高校時代、同級生に拒まれた。美人だけど傲慢なのは、多分自分に自信がないからだ。そんな脆さが愛おしく、遠目に彼女を見守った。大学で読者モデルになった後、彼女は顔に怪我を負う。数多の異性が去っていき、泣いた彼女を抱き締める。大丈夫。僕だけは中身を見ている。

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傲慢だった。「心が素敵」と最初に言われた高校の同級生を袖にして、容姿とお金で相手を選んだ。読者モデルの大学時代、思わぬ事故で怪我をする。顔に残った大きな傷。ちやほやしていた男性は、全員私の前から消えた。「見る目がないよ」。ううん、それは自分の方だ。最初の彼が優しく私を抱き締める。

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胸に触れた彼の右手をぎゅっとつねる。お互いに18歳で未経験。「絶対、H目当てじゃねえ。お前の気持ちが不安なんだ」と彼が呟く。それは私の台詞だよ。好きならもっと強く抱き締めて。「これ以上?」。臆病だから拒んだけれど、胸の鼓動を感じてほしい。大好きなんだ。本当は今抱かれてもいいぐらい。

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「結局、Hが目当てなの?」。また彼女が拗ねている。同じ18歳で、未経験だし、正直したいと思ってる。でも、丸ごとお前を好きなんだ。「証拠見せて」。僕は彼女をそっと抱く。「もっと強く」。……ごめん、気づかれそうで限界だ。頭髪の甘い香りとその胸で、僕の一部が誠意を疑われそうな反応してる。

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幼なじみが傘を忘れた。放課後の高校の昇降口。彼女とは最近喧嘩ばかりだし、相合傘を悪友に冷やかされるのもたまらない。つい、濡れて帰れ、と言ってしまう。「そうするわ。下着透けちゃいそうだけど」。視線を合わせず傘を差しだす。「何よ?」。ほかの男に見られるの、冷やかされるよりたまらない。

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しくじった。高校の昇降口。大雨が降っている。「天気予報見てこいよ」。彼が傘を片手に笑ってる。喧嘩ばかりの幼なじみ。「自業自得だ。濡れて帰れ」。ああ、そうするわ。すぶ濡れで、透けた下着を男子たちに見せつけながら。「ほら」。ん? 何で傘を差しだすの? 「……最初に見たいの、俺だから」

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会社でも家でも妻は全力だ。だからすぐに体を壊す。職場で出会い結婚2年。「仕事が好き。両立できない」。泣いた妻と籍を抜く。上司として久しぶりに同行した出張先。発熱した元妻を宿で寝かしつけ、客先への道すがら考える。できれば一緒にいてほしい。戻って来い。今度は僕が大半の家事を担うから。

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出張先で発熱した。「宿で寝てろ」と上司が言う。目覚めるとすでに夜。苺の氷菓、低脂肪乳、鮭の粥。全部私の好物だ。帰りに買ってきてくれたらしい。「お前なしで何とか商談まとまった」。悔しいな。やり直したい。「成約したぞ」。そっちじゃない。別れて3年。もう一度、あなたの妻になれませんか。

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