掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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ぼっちでいいいや、と思ってた。高3のクラス替え。教室に同じぼっちのアイツがいない。今さらだけど、私は気づく。人づき合いが苦手な自分は、彼の存在に救われてた。まだ好きかどうかはわからない。でも、クラスが別れた彼の姿を見たいと思う。きっとあそこだ。昼休み、弁当持参で屋上の扉を開ける。

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高3の新学級でも俺はぼっち。いいさ、友だちなんて煩わしい。昼休み、屋上でパンを食べてると、クラスが別れた女子と会う。美少女だけど勝気で孤高。やっぱりお前もぼっちかよ。「新年度は男子に学食誘われた」。へぇ……。だったらなんで屋上なのさ? 「変わらぬぼっちの誰かさんと、食べたいから」

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またやらかした。飲むと人恋しく、男性を誘ってしまう。もう社会人。歓迎会では我慢して、帰路、コンビニでビールを飲む。偶然出会った先輩を、家に誘ってしまったらしい。うん? でも私、服着てるぞ。「起きた?」。やはり着衣の先輩が、笑ってる。職場でいいな、と思ってた。決めた。絶対断酒する。

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「私、お酒駄目で……」。歓迎会で新人の子が俯いた。人事の同期が「大物入社」と言っていた。清楚で可愛く、噂はあてにならないな。散会後、コンビニ前でビール片手の彼女と出くわす。え、飲めるの? 「先輩、一目ぼれです。うち来ませんか?」。……なるほど、確かに「お酒は駄目」だし「大物」だ。

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大好きだからつながりたいと切望した。彼女の二十歳の誕生日、僕らは初めて結ばれる。あれから何度、重なっただろう。最近、一度終えた後、潤んだ瞳で「もう一回」と求められる。欲しいのは僕のこと? それとも誰かが与えてくれる恍惚感? 不安を拭い去りたくて、愛する彼女の華奢な肢体を強く抱く。

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二十歳の夜、彼と初めて一つになった。大学の同級生。以来会うたび求められる。好きなのは私かな。それとも私の体かな……。不安を抱えてまた抱かれる。あの夜から3か月。気づいてしまったことがある。そうか、これは分けられないんだ。忘我で彼に抱き締められ、私はねだる。愛してるから、もう一度。

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学生で三つ下の彼と暮らし始める。会社から帰宅すると、部屋は片付き、既に料理もできていた。全部おいしい。「俺、母子家庭だったから」と彼が笑う。同棲前に挨拶した。働き者で家事も育児も得意なんだね。その夜、私はメールを送る。彼を必ず幸せにします。好物のレシピを教えて下さい、お義母さん。

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「俺、家を出る」。あの子と一緒に住むそうだ。長く2人で暮らしてきた。食事を作り、お風呂を沸かし、私はずっと必死だった。でも、もう手放さないとならないんだね……。「代わりにいい人見つけろよ」。あなたは本当に立派になった。20歳の息子を彼女の元に送り出し、シングルマザーの私は少し泣く。

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小さい頃、親父が病気で亡くなった。それからのお袋は、仕事に育児にずっと必死だ。浮いた話の一つも聞かない。「きっとあなたのせいだよ」。大学でつきあい始めた彼女が笑う。ごめんなお袋。無意識だけど、俺が縛りつけていた。そろそろ自分の幸せ探してほしい。明日、大好きな実家から、俺は巣立つ。

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編入した高校で、言葉が全く通じない。孤独と不安で胸が苦しい。授業中、廊下で大きな音がした。何かが倒れたようだけど、あの惨事が蘇る。震える私に隣の男子が囁いた。「без проблем」。拙いけれど、伝わるよ。言葉の通り、大丈夫。故国を離れ避難した。再び平和が戻るまで、私は日本で生きていく。

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