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新居を整理中、昨春もらった手紙を見つける。2年前の新年度、高3の彼女と視線が合った。8歳下の教え子だぞ、と自分に必死で言い聞かせる。「先生、よく我慢できました」。卒業式、泣いて笑った彼女からラブレターを渡された。「1年前か、懐かしい」。入籍間もない新妻が、自分の手紙に目を細める。
新年度の3年生には可愛い子がいる? 女子高教師の夫に尋ねる。「教え子をそういう目では見ていない」と彼は答える。でもさ、相手はそうじゃないかもよ。「ないよ。八つも離れてる」。どうだろう。つきあって1年の今春に結婚した。受け取ったよね、卒業式で。7歳下の制服姿の私が書いたラブレター。
僕に別れを呟いて、恋人がホームを走り出す。若い男にぶつかったことにも気づかない。そのまま男は転落した。半年後。勤務先の後輩に告白する。「別れた直後、元彼が死んだんだ。幸せになっていいのかな……」と涙を流す。あの日、後輩も駅で元彼と別れていた。気に病むな。あれは事故で自殺じゃない。
駅で別れを告げた後、彼はホームから転落した。自分が殺してしまったような気持ちがした。あれから半年。職場の先輩に告白される。この人と幸せになっていいのかな……。「あれは事故。自殺じゃない」。先輩が囁いた。忘れよう、と私は思う。彼のことも、あの日、駅で先輩を見たような気がすることも。
「ママ」じゃなくて「先生」でしょう? 勤務先の保育園でやんちゃな男児をたしなめる。乳児だった5年前、年長のこの子はママを病気で失った。朝晩送り迎えに訪れる、素敵なパパと2人暮らし。実は7歳上のパパのことを好きなんだ。パパとあなたがよかったら、本当の「ママ」にさせてもらえないかな。
毎日顔を合わせるうちに惹かれてた。彼女の方が七つ下。若い男にいつも抱き締められている。僕は5年も独り身だ。恋の仕方も忘れかけた。このままの方がいいのかな……。「じゃ俺がケッコンする」。帰り道、ませた息子に笑われる。パパがしてもいいんだな? 決めた。担任の保育士さんに打ち明けよう。
大学で知り合った彼女に旅行をねだられる。内緒だけど、交際も二人旅も初めてだ。自信が持てず、旅先も食べたい物も尋ねて決める。夜、彼女に「優しくしてね」と囁かれた。これって、そういう意味だよね? 「……腕枕だよ」。危うく誤解するとこだった。僕の右手に頭を預け、なぜか彼女が拗ねている。
同じ大学の彼と、初めての二人旅。リクエストした「美味しい魚介と美肌の湯」は叶えてくれた。いよいよか。誘ったのは私だけれど、未経験だからドキドキだ。布団をかぶり、優しくしてね、と囁いた。「願いは何でも聞くけれど、優しく何を?」。……もしやこいつも未経験? 優しく……腕枕して下さい。
筆名だけどすぐ気づく。大学時代の男友達だ。新人賞の受賞作。作家志望の主人公を支える少女が、想いを言えずに死ぬ話。待て待て。設定は当時の私たちだけど、君は気持ちに気づいてたよね? 何より私は生きてます。通販サイトに酷評レビューを投稿し、付け加える。ファンレターの送り先はどこですか?
新人賞の受賞作が出版された。作家志望の男を支える少女が、告白できず死ぬ話。大学時代の女友達との記憶が題材で、僕の私小説と評された。通販サイトに「ネタバレあり」の酷評レビューが投稿される。「主人公は相手の好意を知ってたはずです」。現実はそうだったけど……。「何より私は死んでません」