掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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転校生が僕の隣の席になった。彼女は黙って春の空を眺めてる。その日、授業中に大きな音がした。高校は改修中で、業者の脚立が倒れたようだ。彼女がガタガタ震えている。思い出しちゃったんだね。「без проблем」。ネットで覚えた欧州の言葉をそっと囁く。大丈夫だよ。青い瞳に涙を溜め、彼女が頷く。

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「ちょっとHな写真がほしい」。彼氏になった幼なじみにねだられる。春から大学進学で、私たちは遠恋だ。信じてるけど、迂闊にそんな写真は送れない。「人肌が恋しくて」。画像でぬくもり感じられる? 耐えなさい、浮気もダメよ。あと1か月で大型連休。戻ってきたら、ちゃんと感じさせてあげるから。

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「あんた、頭わいてるの?」。彼女になった幼なじみに叱られた。大学に進学し、遠距離恋愛。恋しくて、ちょっとHな写真をねだった。切られたLINEが着信音を響かせる。「Hな写真❤」。文字を見て、慌ててアプリを起動する。「これで耐えろ。浮気は✖」。……そうするよ。懐かしいな、園児の頃の水遊び。

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また男の子に打ち明けられた。口すらきいたことがない。私のどこがいいのかな……。「美人で本当に羨ましい。ガサツな私にゃこんな馬鹿しか相手がいない」。高校の休み時間、彼氏とじゃれあう同級生が苦笑した。確か、もう2年も続いてる。誰も私の中身を見てくれない。あのね、私はあなたが羨ましい。

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高校の同級生は美少女だ。いつも孤高で慎ましく、ガサツな私と正反対。いいな、美人は。無双でしょう? 「どうかな。私はあなたが羨ましい」。謙遜にすら嫌味がない。「高嶺の花より手が届く野山の花」。何だそれ。まるでフォローになってないぞ。頬をぎゅっとつまみあげ、交際2年の彼とキスをする。

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高校の新年度、彼女は隣のクラスになり、彼とはまた同級生だ。少し前、彼には密かに打ち明けた。休み時間、彼女と目が合い、変わらぬ笑顔に切なくなる。「もう勇気を出して言ってみろ」。私の指向を受け止めて、背を押してくれる彼に感謝する。うん。頑張って告白するよ。同性の彼女に「好きだ」って。

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「ちゃんとして」。今朝も妻が小うるさい。15年前、高校で隣の席だった。彼女に惹かれた理由を思い出せない。通勤電車。制服のカップルがイヤホンをシェアしてる。そうだ。あの日、忘れ物をして登校した。呆れつつも机を寄せ、教科書を見せてくれた人がいる。「ちゃんとしてね」。僕は彼女に恋をした。

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夫に毎日苛立たされる。仕事も家事も器用じゃない。高校で恋に落ち、結ばれて15年。彼のどこに惹かれたのだろう……。ある日、古いCDが見つかった。交際直前、夫がくれた自作のオムニバス。聴き直して気がついた。全部失恋の曲だよね。苦笑いして思い出す。私は彼の不器用さを愛おしいと感じてたんだ。

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神頼みの甲斐もなく、本命の男子高には受からなかった。出席した公立高の入学式。「覚えてる? なわけないか」と隣の女子に笑われた。昨夏、水泳部の地区大会で、落としたタオルを拾ってくれた女の子。「私は高校でも泳ぐけど、君はどうする?」。神様、こっちは大本命です。もちろん、水泳続けます!

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中学時代、男子5人に告白されて、断った。ある時、同性の後輩にときめいている自分に気づく。結局、想いを言えず卒業した。「私も同じ女子高目指します」。来春受験の彼女が呟く。貴女の指向はわからない。だけど私は待っている。短髪を少し伸ばそう。大好きな後輩に、綺麗だと思ってもらえるように。

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