掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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上手く止まれず転倒し、ゲレンデの立ち木で足を打つ。25年前の学生時代。「平気ですか?」。同世代の女の子がスキーを外して駆けてきた。大学生の娘が冬休みにスノボ旅行を計画してる。怪我するぞ、と私は駄目を出す。「そういう年頃。認めてあげて」。あの時の女の子とそっくりな、娘を妻が援護する。

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「絶対駄目」と父が言う。大学の冬休み。女同士でスノボ旅行を企画した。「パパも学生時代、スキーでぶつかり怪我をした」。父の足に古い傷。注意するから平気だよ。「不安は怪我じゃなくぶつかる方でしょ?」。母が笑って口を出す。そういえば前に聞いたな。ゲレンデだよね、パパとママが出会ったの?

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「最近遅いしクリスマスも仕事なんだね」。彼女に愛想を尽かされた。僕はカフェの店長で、会社勤めの彼女と休みが合わない。大学から7年続いた恋は終わった。ごめんな、遅い方には別の理由もあったんだ。半年前に八つ下の女子大生がバイトに入った。懸命だけど危なっかしく、その子から目が離せない。

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ほかに好きな誰かがいるかもな、と思いつつ、高校の同級生に告白した。答えはOK。彼女は優しく、親友とのつきあいも尊重してくれる。ある日、3人でカラオケ行くかと誘ってみた。彼女は頷く。親友が失恋ソングを歌ってる。そういうことか、と僕は気づく。彼をじっと見つめたまま、彼女が涙ぐんでいた。

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1年間の片思いを諦めて、打ち明けてくれた高校の同級生とつきあった。彼は優しく、友だち思いだ。次の週末、どこ行こうか、と私は尋ねる。「悪い。親友との先約がある」。そっか。楽しんできてね。「ごめんな」。ううん、謝るのは私のほう。大好きなんだ。あなたを通じてまだ繋がれる、親友のことを。

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私のせいでパパとママがぎくしゃくしてる。あの日、お腹の大きなママは、階段で躓いた。生まれてきてあげられずに、ごめんなさい。見えない私は1年も2人のそばにいる。神様、我儘を叶えてくれてありがとう。もう平気。私がいた場所に、弟が宿ったみたい。パパママさよなら。そろそろお空に還ります。

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2025-11-12

男子の下ネタトークに応じてしまう。またやらかした。本当は高2の今もキスすら知らない。けれどなぜか経験豊富に思われて、そのキャラを崩せない。放課後の踊り場で、自分が嫌いで涙ぐむ。片想いの彼にも聞かれたかな……。そもそも望み薄だよね。彼は話に加わらず、怒ったように常に私を見つめてる。

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文芸部の後輩が気にかかる。気のある素振りをしたかと思うと、距離を置く。ある日、小説サイトで逆の境遇の短編を読む。女子が好きな男子に翻弄される物語。ヒロインはちゃんと想いを告げればいいのに。感想を書き込むと、筆名の「後輩ちゃん」から返事があった。「告るの男子のほうだと思いません?」

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文芸部の先輩に片想い。鈍い彼はちっとも気持ちに気づいてくれない。焦れる思いを文字にして、筆名で小説サイトに投稿した。「ヒロインはちゃんと想いを告げればいいと思います」。私小説だし、期待していなかったのに、読んでコメントくれた人がいた。嬉しいけれど、誰だろう。この「先輩くん」って。

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