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「今年もあと3日だな」
「年内にやり残したことでもあるの?」
「幼なじみと温泉旅行」
「ないな。彼女つくりなよ」
「幼なじみとキス」
「それもない。私以外をあたってくれ」
「幼なじみと熱いハグ」
「ないねえ」
「せめて『実は好きだった』と告られる」
「……それはちょっとあるかもしれない」
「寒いのに俺待ってたの?」
「会えなきゃ諦めようと思ってた」
「告ってくれたけど、俺でいいの?」
「君がいい」
「……実は俺もクラスで気になってた」
「私じゃダメかな?」
「んなことない」
「じゃ交渉成立だね」
「クリスマスなのにプレゼント用意してないぞ」
「君の想いが私への贈り物だよ」
リア充どもめ。クリスマス、悪態つきながら一人下校する。通学路にある公園も電飾でキラキラだ。ベンチに気になるクラスの女子が座ってた。「好きな人を待ってるんだ」。声をかけると笑顔を返される。なんだお前もかよ。お幸せに、と立ち去ろうとすると、制服の袖を掴まれた。「君を待ってたんだけど」
「マジで幼なじみのいつもの部屋か。はい、ケンタ」
「サンキュ。イブといっても平日だしな」
「おじさんとおばさんは?」
「外食だってさ」
「ってことは、あんたと2人きりか」
「それが何か?」
「私、押し倒されたりするのかな?」
「まだ恋人3日目。しねーよ」
「そこは欲情するとこじゃない?」
「近場でメシかな」。クリスマスをどう過ごすか尋ねると、彼が答えた。交際5年目。「今さら特別な日じゃないもんな」。そう続ける彼に笑顔を作る。あの頃はクリスマスだけじゃなく毎日が特別だった。いつからだろう、私と彼から「特別な日」すらも消えたのは。潮時なのかな……。私は黙ってそう思う。
「キスってどのタイミングでするんだ?」
「幼なじみとはいえ今は彼女だ。私に聞くな」
「元カノとはキスする前に別れたからなあ」
「わはは。あれは無様な振られ方だったね」
「お前はどうなの?」
「ファーストキスは経験済み」
「マジ!? いつどこで誰とだよ?」
「5歳の時、保育園で、あんたと」
「17年一緒だからなー」
「お互い知り尽くしてるもんね」
「恋人になったんだから、手つなぐか」
「うん……あんた、結構指太いんだね」
「肩組むぞ……お前、華奢だな」
「これでも女子だからな」
「胸触っていい?」
「まだ早い! でもぺたんこではないぞ」
「意外と知らないことあるな」
「だね」
彼のため夕食に腕を振るう。「天つゆは?」。主菜は得意の天ぷらだ。無意識にソースを出していた。私を振った元彼は、いつもソースで食べていた。慌てて取り繕うと、彼はそのままソースをかけて「これはこれで美味しいね」と微笑んだ。ごめん、少し引きずっていた。この人と幸せになろう。そう誓った。
失恋から1年。引きずる僕はいいとこなしだ。成績は伸び悩み、人付き合いもうまくいかない。自己嫌悪でため息つくと、幼なじみに呆れられた。「また恋人ほしい病?」。この際、お前でいいや。冗談めかして口にすると、彼女は真顔でこう言った。「君も嫌いな君のこと、誰かが好きになってくれるかな?」