掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「あなたと息子ともっと一緒にいればよかった」。妻は泣いて旅立った。発病は息子が2歳を迎えた頃。産後も妻は忙しく、気づいた時には手遅れだった。大学時代、僕は家庭的な子に好かれてた。でも、自立した後の妻が眩しく見えた。保育園へ息子を迎えに行きながら、ふと思う。彼女は今頃幸せだろうか。

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一つ上のお兄ちゃんに彼女ができた。私と同じ高校の、美しい先輩だ。晩秋の公園で、キスする2人を見てしまう。胸がぎゅっと締めつけられる。密かにずっと好きでいた。許されないと思ったから、想いを封じ込めてきた。私は一人涙ぐむ。お兄ちゃん、諦めきれないよ……。まだ私、先輩のことを愛してる。

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高校の部活の後輩宅。忘れ物を届けた春、大学生の姉に会う。「妹、外出中だから渡しておくね」。その一瞬で僕は恋に落ちていた。片想いを伏せたまま必死で受験勉強し、秋の模試はA判定。「よかったですね」。後輩は少し笑って涙ぐむ。嬉しいけど大袈裟だよ。合格し、想いが叶った時こそ祝ってほしい。

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元カノが何者かに殺されたと報じられてる。8日前、「婚約者が時々豹変し、その間の記憶がないの」と相談された。彼は荒んだ家庭に育ったらしい。乖離だろうか。治療で改善しうるけど、婚約破棄も選択肢だよ。「愛してるから支えたい」。彼女の想いを汲んでしまった未熟を悔やむ。僕の仕事は精神科医。

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あの子、あなたに恋してる。「ないない。俺もう30歳。何より教え子だろ」と理科教師の彼は笑う。私は今春、美大を出て同じ高校に着任した。懐いてくれた2年の女子は、多分彼に惹かれてる。夏から半分同棲してるのに、気持ちが酷く粟立った。忘れたの? つきあい始めた5年前、私が教え子だったこと。

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SNSの紹介文を確かめて、彼のアカウントだと確信する。交際前、高校の友人に「彼は浮気性」と心配された。後ろめたいけど、匿名でフォローする。すぐフォローを返されて、今は毎日絡み、好意すらほのめかされた。応じたら終わりにしよう。拒んでほしい祈りつつ、「会話機能使わない?」と持ち掛ける。

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彼女に後ろめたさを感じつつ、SNSのフォロワーに惹かれてる。多分同じ高校生。1か月前に相互になり、今は毎日やりとりしてる。短文だけでの浮気心。いつも眠そうな彼女も悪い。「会話機能使おうよ」。フォロワーに誘われて、深夜スマホをタップする。「応じちゃうんだね」。よく知る声が泣いていた。

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「もう雑誌とつきあえ」。ひと月前、幼なじみの彼に振られた。編集者の仕事が忙しく、土日もあまり休めない。その日、深夜に残業中、私はえずく。卑怯だとは承知している。でも半分は彼の命だ。これからは仕事も抑えよう。今さらやり直せないかな……。終電を逃したと偽って、迎えにきてとLINEを送る。

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些細なことで喧嘩して、彼女としばらく話してない。今日は高校の文化祭。うちの組はお化け屋敷だ。もぎり役をやってると、彼女が列に並んでた。暗いしやめとけ、と声をかける。「喧嘩中でしょ。怖くないからほっといて」。いや本当に怖いんだ。脅かし役の悪い男子に、お前が触られるんじゃないかって。

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高校時代に援交してた――。彼女の噂を耳にした。大学の一つ後輩。そういう雰囲気になるたびに、小さく体を震わせる。不慣れではなく、異性に嫌悪を抱いてたんだね。家庭が荒んでいたとは聞いていた。悩み抜き、僕は決める。ありったけの愛を注ごう。辛かった過去の分まで、彼女が笑顔でいられるように。

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