掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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高校の後輩に片想い。クリスマスに告白しようと思ってるけど、何を贈ればいいかわからない。女子へのプレゼントの助言して、と彼女を誘う。店内を笑顔で回る姿に切なくなる。何とも思われてないんだな。なあ、この小物なら赤かな青かな? 「女子向けは赤ですね。……蛇足ですけど、私は青が好みです」

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彼にねだられ自室に招いた。高2の夏から交際し、3か月。手を握る彼の顔が私に近づく。一瞬閉じた目を開き、ごめん、と小声で囁いた。薄い壁の向こう側に、今日は兄がいるはずだ。諦めたくて、彼の告白に頷いた。やっぱり私、まだ無理だ。お兄ちゃん。せめて最初のキスだけでも、求めては駄目ですか?

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自室を出たところで妹の彼と鉢合わせた。「お兄さんですね。妹さんと交際させていただいてます」。会釈した彼の顔が上気している。さっき、隣室の会話が一瞬途切れた。高2だし、妹はそのうち抱かれるだろう。兄だから、と心で泣いて諦めた。なのにまだ、妹の白い肌に触れられることが、堪えられない。

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同性のクラスメイトに惹かれてる。でも、勇気がなくて言い出せない。気の置けない関係が、壊れることに怯えてる。晩秋、彼女が編みかけのマフラーを見せてくれた。そうか、贈りたい男の子がいるんだね。手編みは少し重いかも……。気取られぬように嫉妬して、私は呟く。マフラーは、私の好きな萌黄色。

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片想いのまま2年目の冬がくる。編み始めたマフラーは50センチを超えた。今年は想いを伝えたい。雑談を装って、どうかなと聞いてみる。「手編みか。少し重いかも」。そうだよね、と私は頷き、笑みを浮かべて毛糸をほどく。「もったいない。渡してみなよ」。ううん、やめておく。大好きな貴女にだから。

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大学の同窓会で3年ぶりに帰京した。「東京寒いよ。私の男物だから着ていきな」と姉にセーターを渡される。遠距離で別れた元カノは短髪に変わってた。新しい彼がいるのかな……。彼女が横から「今カノの匂いがする」と囁く。いねえよ、お前酔ってるな。やり直そうという一言を、僕は必死で飲み込んだ。

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高校の同級生と交際2か月。彼に告白されたけど、私のどこがいいのかわからない。もっと彼を知りたくて、家に連れていってとお願いする。初対面の母親は雰囲気が私によく似ていた。そういうことか、とようやく気づく。お母さん、今後は教育もお任せ下さい。ご子息のマザコンを、早晩矯正してみせます。

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世話焼きの同級生が痛々しい。男女を問わず恋の相談に乗り、告白の場まで設けてる。これまで全部上手くいき、彼女のあだ名は「恋愛の神」。けれど、中高一緒の僕は知っている。神様、恋愛経験ゼロじゃんか。空論が通じなくなる前に、僕の相談も聴いておけ。なあ、「雲の上の女の子」が好きなんだけど。

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高校の同級生が体育の授業で足を捻る。保健室までおぶってやる、と僕は言う。彼女は「いいよ、恥ずかしい」。中学からの腐れ縁。今まで一度も意識したことはない。半ば強引におんぶすると「背中、大きくなったね」と耳元で囁かれた。……お前もな。ジャージ越しに触れた膨らみに、強く異性を意識する。

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「決着待ってる」。1年前、彼女は笑った。会社では交際を伏せていた。後輩に想われ、僕は答えに窮してた。断って、彼女に求婚しよう。後輩を泣かせ戻った場所に、けれど彼女はいなかった。今度は待たせないと決めたけど、お前は許してくれるかな……。事故死した彼女の命日に、後輩と2人で墓参する。

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