//=time() ?>
「そう思うんだ」。才色兼備の幼なじみに睨まれる。高校から野球部のマネージャー。大方、好きな奴でもいるんだろ。いいよ、見損なえよ。陰キャな僕とは釣り合わない。「本気の誰かを本気で支える。私の性格知ってるよね?」。俯く僕に彼女は言った。「私に本気じゃないんなら、私は君から降りるから」
もしやと思う。彼女は年々若々しくなり、僕の心を見透かすようなことも言う。彼女の時間は逆行し、特殊能力も備えてる?――。意を決して尋ねると「何それラノベ?」と失笑された。「もう30歳。年相応のメイクしてるの」。じゃ、読心術は何なんだ!? 「10年も交際してれば厨二病の考えだってわかります」
「わからないんだ。姉だよ私」。キスの後、彼女が言った。双子の美人姉妹。恋人は妹の方だ。狼狽えてると彼女が囁く。「胸のホクロ?」。僕が小さく頷くと、彼女は制服のリボンを外した。膨らんだ白い肌にホクロはない。「姉の体を知ってるんだね」。妹が仕掛けた罠と僕の罪。恋の終わりを知らされる。
「実は俺んち猫がいて」
「ほほう。それで衣服に黒い毛がついてるんだ」
「じゃれてくるからどうしても」
「へえ……。この前あなたが猫とお散歩してるの見たよ」
「え?」
「飼い主と別れた後で、黒猫さんに聞いてみた」
「な、何を?」
「『あなたのご主人、栗色の毛の猫も飼ってませんか?』って」
こらこら近いぞ。放課後、幼なじみと2人きり。彼が急に間合いを詰めた。少女漫画の相場では、ドキドキさせて「髪や睫毛に何かついてる」「熱っぽいのでおでこで検温」の肩透かし。で、どれよ? 訊こうとした矢先、そっと唇を塞がれた。え、何この展開? 彼は微笑み「幼なじみが恋人に変わる瞬間」。
「それじゃあね」。困ったように、薄く笑って、彼女が背を向けた。長い髪をきゅっと束ねたポニーテール。高校時代、その姿に一目ぼれした。あれから3年。いつも隣に君がいた。いつからだろう、互いの温度が冷めたのは。彼女の背中が遠ざかる。変わらぬ髪をぼんやり眺め、変わった想いに泣きたくなる。
「『転生しても君を愛してそばにいる』なんて言っときながら、半年で目移りだよ。同じ台詞はこれで2度目。最初の彼は病気で死んじゃったんだ。立ち直るのに3年かかり、ようやく誰かを好きになれたのに。って、ごめん、あなたに言っても仕方ないね」
泣けない僕は代わりに小さく「ニャー」と鳴いた。
「高校選び、しくじった」
「マジ? ウチを勧めた俺にも責任あるな」
「お兄ちゃん、同級生に彼女いたんだ」
「あれ、知らなかったっけ?」
「聞いてない。毎日一緒の登下校、見るのがしんどい」
「年下の幼なじみが何言ってんの」
「あれ、知らなかったっけ?」
「何を?」
「お兄ちゃんへの片思い」
「別にあんたのためだけじゃないんだから」。体育祭の昼休み。幼なじみがお握り二つ持ってきた。これが夢見たツンってやつか! デレはまだかと構えると「ママに会ったらお礼言って」。何だおばさんお手製か。帰りしな、振り向かぬまま彼女は言う。「それとママから伝言です。『娘を生涯よろしくね』」