掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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一目であの子と気がついた。高校の修学旅行。トイレから戻ると、彼が他校の綺麗な少女を見つめてた。中学の卒アルを見せてもらったことがある。集合写真で必ず2人はそばにいた。東京で、初恋相手と偶然再会したんだね。涙を堪え、気づかぬふりで彼に尋ねる。ね、今は私だけを見てくれているんだよね?

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高校の先輩に告白された。ずっと片思いしていた相手だ。ママとパパは仲が悪い。昔見た、結婚式の写真では、2人とも幸せそうに笑ってた。一人娘の私のせいかな、不仲になったの。先輩を大好きだけど、遠い未来に身籠れば、そんな想いも霞むのだろうか。彼の笑顔をぼんやり見つめ、私は答えに躊躇する。

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「パパと一緒になって良かったことある?」。高校生の娘に尋ねられる。もう随分と喧嘩が絶えない。婚前には同じだと思ってた価値観も、ズレている。答えに窮し、娘を見つめる。そうか、一つだけ良かったと思えることがあるよ。「なあにママ?」。パパと結婚しなければ、愛するあなたに出会えなかった。

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「二つ約束ね。幸せ掴め」。もう一つは? 「来世でも一緒にいたい。忘れないで、私のことを」。そう泣いて、彼女は高3で病死した。あれから10年。職場で出会った妻は、来月に初産だ。幸せを感じてる。だから、もう一つの約束も果たしちゃ駄目か。「神無」にしたい。彼女と同じ10月生まれの娘の名を。

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同級生に復縁を求められ、やり直す。彼女はやっぱり僕には向いてない。最初の別れは僕から伝え、彼女を泣かせた。2回目の交際で、愛想を尽かされるように僕は振る舞う。「ごめんね、別れよう」。ひと月後、彼女が言った。涙を流す彼女を見つめ、僕は気づく。振らせるほうが、優しいこの子を傷つける。

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高校で部活の後輩とつきあい始めた。「お弁当、つくりましょうか?」と彼女が笑う。料理好きで、毎朝自分の分もつくっているそうだ。お願いしかけてやめにする。「遠慮しなくていいですよ」。違うんだ。完食すると、喜ぶ別の女性がいるんだよ。お前のことを大好きだけど、母ちゃんの笑顔も見たいんだ。

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宿題を出し忘れ、高校の担任から理科準備室の片づけを命じられる。「いいことねえな」と不貞腐れた同級生と2人きり。終えた後、片思いを抑えきれずに彼の頬にキスをする。戸惑う彼に、いいことあるじゃん、とお道化てみせる。「よくねえよ」。ごめん、唐突過ぎたね。「キスの部位がちっともよくない」

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病院で15年ぶりに彼女と会った。高校で交際し、彼女は医学部に進学する。僕は先に就職し、多忙な彼女を信じ切れず破局した。「大丈夫、私が治す。君は死なない」。手術着の彼女が笑う。末期だよな、と言いかけて、言葉を飲む。麻酔で意識が遠のきながら、心で詫びた。ごめん、今度こそお前を信じるよ。

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死ぬのは嫌だ、と私は思う。高校時代、彼と初めて交際した。大学に進学後、ともに多忙ですれ違い、破局する。半月前、15年ぶりに再会した。「独身なんだ、同じだね」と病室で笑いあう。転移もあるけど、死ぬのは嫌だ。彼がベッドで眠ってる。看護師に、メスと小さく指示を出す。私はあなたを必ず治す。

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小さい頃に熱が出て、右だけ耳が聞こえなくなった。先輩を好きだけど、伏せている障害を受け入れてもらえるか自信がない。高校の帰り道、いつもと逆に私の左を彼が歩く。「何度目かだけど……お前が好きだ」。先輩が囁いた。嬉しくて、私は思わず涙ぐむ。でも先輩、私、打ち明けられるの初めてですよ?

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