掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)。リンクは固定ツイートご参照。原案の縦読み漫画(studio.booklista.co.jp/series/b88a988…)も配信中。
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2024-11-25

「別にあんたのためだけじゃないんだから」。体育祭の昼休み。幼なじみがお握り二つ持ってきた。これが夢見たツンってやつか! デレはまだかと構えると「ママに会ったらお礼言って」。何だおばさんお手製か。帰りしな、振り向かぬまま彼女は言う。「それとママから伝言です。『娘を生涯よろしくね』」

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我が儘な彼女に振り回され、幼なじみが弱ってる。久々に2人で帰る道すがら、無理に明るく振る舞う彼に「私の前だぞ。泣けばいいよ」と言い聞かせた。私にもたれ、嗚咽しながら「お前が恋人だったらな」と彼が言う。優しくハグし、私は囁く。「それで失恋したら泣けないよ。今はまだ大事にとっときな」

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部活を終えた帰り道、くしゅんとくしゃみが出た。「風邪?」。先輩が私を見る。平気ですと笑みを返すと、厚手のパーカーを差し出された。「いいから着て帰れ」。小さく頷き、頭と両手をくぐらせる。その時私は気づいてしまう。部活が一緒の親友と、同じシャンプーの残り香に。この片思いは終わらない。

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