掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「映画つき合え」。高校帰り、腐れ縁の男子に言われた。お互い男女と意識してないから、飾らず話せて心地いい。シネコンで、料金表を眺めた彼が係員に呟いた。「俺たち交際してるんで、カップル割ききますよね?」。こら駄目でしょ。「黙ってりゃわからねえよ」。……違うって、私が意識しちゃうんだ。

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高校の先輩が跳ねられた。「彼氏になっていきなり死ぬのは反則だよね」。病院で彼の体にすがった私を、先輩の幼なじみが慰める。3日前に告白した。「答えは待って。気持ちに決着つけるから」と返された。言葉の意味にようやく気づく。恋人未満の私にとって、残酷な答え合わせ。幼なじみが泣いている。

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セーラー服の後輩が、彼の体を抱き締める。3日前、「俺ってモテるな。告られた」と幼なじみが笑ってた。物好きもいるんだね。で、応じるの?と私は返した。「いいんだ、応じて」。不幸中の幸いだった。君は最期に彼女を作れた。私は2人に妬かずに済む。ベッドの彼は動かない。今朝、車に跳ねられた。

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大学で見知らぬ男子に告白される。「……パパ活の噂、嘘ですよね?」。尋ねられ、そのまま彼を家に招いた。「僕は信じていませんから。容姿で知らない女子を買うなんて、吐き気がします」。ありがとう、と彼を抱き締めキスをする。発火した。彼が私に覆い被さる。君も同じだ。パパ活のおじさんたちと。

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地味で清楚、目立たない。もやもやを抑えきれず、初めて彼女を呼び止めた。ずっと片想いしてました。あんな噂は嘘ですよね? 「……大学で訊かないで。家すぐそばなの。そこで話そう」。恥じらう姿に確信する。やっぱり嘘だ。じっくり聞くよ。君を守る。僕は絶対信じない。君がパパ活しているなんて。

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病んだ彼女に耐えきれず、後輩に相談した。「守ってあげます」。優しくされて寝てしまう。また彼女からLINEが届く。「あの人の家に戻って下さい」。呟いた後輩が、俺に包丁を握らせた。洞穴みたいな瞳をしてる。この子もメンヘラだったのか。「……何するかわかりますよね? 先輩を独占したいんです」

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ベッドの彼は息が荒い。ほらやっぱり私でしょ? 浮気したけど、こうして戻ってきれくれた。彼女かなりヤバいよね。それで護身のために、刃物を持っていたんでしょ? 答えぬ彼はもう息をしていない。メンヘラだって一目でわかった。自分とあの子はよく似てる。私の握った包丁が、彼の血で濡れている。

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つきあって間もない彼女が絡まれてる。高校の文化祭のメイド喫茶。なあおっさん、脚や胸を眺めつつ、「露出が多い」と小言抜かすな。「何だ君は?」。まだキスしかしてねえけど、コイツの彼氏。早く帰れ。彼女、顔が青ざめてるぞ。「……もういいよ」。よくねえだろ。「この人、私のパパなんだ」。え!?

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「そのメイド服、スカート丈が短くないか?」。高校の文化祭で絡まれる。「胸元も際どすぎる」。そういう視線で見ていると、JKに嫌われちゃうよ。「……萌え萌えきゅんって、愛情を安売りするな」。これはメイド喫茶のお約束。もう帰りなよ。家に「ご主人様」って言ってくれる人、いるじゃない、パパ。

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「思い出した」と彼が囁く。ああ、まだ交際間もない頃、高校帰りに話したことね。手を繋ぐだけでドキドキし、先に進んでピュアな好意が消えることに怯えていた。「何をするかじゃないんだな」。うん、相手をどう想うかなんだね。お互いに、今も混じりっ気なく好きでいる。今日、私と夫に家族ができた。

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