掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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告白を断られた。高校で出会って以来、彼は私の全部に思えた。放課後の教室で、机に突っ伏し涙を流す。ふいに後ろから抱きしめられた。振り向くと、同性の親友だ。彼に打ち明けなければよかったよ。もう私には誰もいないや。「大丈夫。私がいるよ」と彼女が囁く。「卑怯だけど告白するね。私がいるよ」

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突然別れを告げられた。大学で2年続いた初の彼。共通の友人経由で「垢ぬけないのが嫌なんだ」と理由を知る。泣きはらして私は誓う。絶対綺麗になってみせる。あれから3年。結婚式に招いた彼が、息をのむのが伝わった。ほくそ笑み、私は心で夫に詫びる。復讐心が癒えぬほど、まだ彼のことを愛してる。

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「私と歩けて幸せだね」。高校からの帰り道、幼なじみと偶然会った。よもや俺の想いに気づいてないよな。お前に女は感じない、と言ってきた。今さら撤回できねえよ。天を仰いだその瞬間、溝に躓きよろけた体を支えられる。「大丈夫?」。体を離せ、小悪魔め。制服越しにたわわな女を感じるだろう……。

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彼はターンでしくじった。痛めた足が治ってないようだ。高校最後の水泳大会。今年も彼は競り負けた。会場裏手で涙をこらえる姿を見かける。勝たせてあげたかったと感じた瞬間、胸の想いが溢れ出た。水着にシャツを重ねた彼を、抱き締める。お互い部活は引退だけど、今から恋の練習始めては駄目ですか?

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半年前、大学の男友達に呼び出された。ちょっとだけ期待した自分が馬鹿だった。彼に恋人がいるのは知っている。あまり上手くいってないことも。悩みを聞かされ、一夜を過ごす。いいよ、と言ったのは私だから、体だけの関係は自業自得だ。黙ってなきゃね。この狂おしい嫉妬心と、私が初めてだったこと。

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「また振られた」と彼が言う。中学以来3度目だ。高3のこれまでに、私も2回ほかの男子に失恋してる。仕方ない、今度はこっちが慰め役だ。「上手くいかねえなあ」。お互いに、きっと選ぶ相手を間違ってる。「同感だ。どんな相手がいいのかな?」。ハグされながら、私は思う。本当に誰がいいんだろう。

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「いい加減に恋人つくりなよ」。春の休日。ベッドで寝転ぶ僕の隣で彼女が笑う。何だ、つくっていいのかよ。「今さら私に拒否権ないし」。まだ1年だぞ。「もう1年。そろそろ私、行くからね」。待てよ、と僕は手を伸ばす。微笑む彼女が霞んでいく。そこで泣きながら夢から覚めた。今日は彼女の一周忌。

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先輩がカフェで遠くを見つめてる。同じ大学の二つ上。「彼が元カノを忘れられずにいるの」。半年前、酔った先輩に聞かされた。もうやめましょう。僕なら絶対そんな顔をさせません。そう呟くと、切なげに微笑んで、先輩が囁いた。「駄目だよ。その時は、大事な君に今の私と同じ思いをさせるだけだから」

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「フレンチに連れていかれた」。大学時代の女友達。ともに酒好きで、会社帰りに時々飲む。勤務先の先輩が、彼女に好意を持ってるらしい。僕でも名前を知ってる高級店。で、気持ちは分かったの? 「別のことが分かったよ」。酎ハイと80円のつくねを口にし、彼女は笑う。「私、こっちの世界の人だった」

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バイトの最終日、先輩に写真を撮らせてもらう。その時、不意にキスされた。突き放し、以来半年、音信不通だ。あの頃、難病を告知されていたと今日の葬儀で親に聞く。病床で私を好きだと言ったそうだ。道化たスマホの写真と真面目な遺影。先輩、想いは真っすぐ伝えて下さい。私は泣いて悔やんでいます。

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