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高3の弟が外出中、部屋で文庫を発見した。主人公の高校生が、愛する姉と結ばれる内容だ。やっぱりそうか。帰宅した弟に、その場で見つけたふりをして、私は突っ込む。「姉貴やめろよ」。顔が赤いぞ、私と同じだ。自分に勇気がないのを棚にあげ、私は促す。いいじゃない、好きなものは好きって言えば。
女子大生で年子の姉が僕の部屋に入ってきた。またノックもなしだ。「何隠したのよ?」。枕の下の文庫本をとりあげられる。おい、やめろよ。「いいじゃない。好きなものは好きって言えば」と笑われた。言えるかよ。それ、拗らせた高校生が年上に恋する話だ。言ったら絶対困らせる。なあ姉貴、大好きだ。
小6の林間学校。腕に抱えた薪の束を落っことす。「男子のくせに情けない」。班の女子に笑われた。生意気で可愛げのかけらもない。「仕方ない。半分持つよ」。細い腕で薪を軽々持ち上げた。意外に力あるんだな。「まあね。母子家庭だから力仕事は私の役目」。……何だよ、お前、かなり健気じゃねえか。
最悪だ。小6の林間学校。何かと私につっかかる、同級生と同じ班。夕食の調理中、包丁で怪我すると「下手くそめ」と笑われた。本当嫌なヤツ。「どけよ」。絆創膏を差し出して、包丁を奪った彼が見事に野菜を剥いていく。え、何で? 「うち父子家庭だからな」。……何だよ、あんた案外いいヤツじゃん。
「すまん」と夫が家を出る。前妻が重い病に倒れたそうだ。私との娘以外に子どももいる。すがれなかった。働きながら、何も知らない娘と2人、生きていこう。前妻を看取った直後、今度は夫に末期の病が見つかった。15年前、妻子ある夫を奪って娘を宿した。神様はよく見ている。私もそのうち罰を受ける。
母が事故死し天涯孤独だ。3年前、父は突然家を出た。母は追わず、その後の父を私は知らない。なぜか母は亡き祖父母に絶縁されてた。寂しい通夜に制服少女が訪れる。私より少し上だろうか。「お互いもう血縁は一人だね」。あなた誰? 「去年死んだ父の娘。初婚相手の子どもだから、腹違いの姉になる」
面白みがない――。30歳でまた恋人に捨てられた。初カノを思い出し、今さら悔やむ。読書が好きな高校の同級生。真面目すぎ、僕から別れを切り出した。デートで通った本屋の前を通りかかる。恋愛の指南書でも買ってみるか。「必要なの?」。振り向くと、書店のロゴのエプロン姿。懐かしい顔が笑っている。
近所の書店で息を飲む。近く廃業するという。「儲からず、後継者もいなくって」と老店主。高校時代、初カレとよく訪れた。振られてさらに乱読し、今の仕事に興味を持つ。三十路の今も身軽な独身。書店に明るくないけれど、数字は読める。店主に告げた。私に継がせてもらえませんか。コンサルなんです。
一浪の夏期講習。受験生に夏はないぞ、と講師が言った。セーラー服の現役生が「先生も、少しは楽しいことが必要だって、わかっていると思いますよ」と頬を染める。そこで私はピンときた。多分「少し」じゃ収まらない。溺れてすべてが手につかなくなる。今年はこの子か。去年は私。散々交わり浪人した。
受験生に夏はないぞ――。夏期講習の予備校で、講師が言った。「……わかってるって」と隣の女子がぼやいてる。一浪で私の一つ上。「でもさ、少しはハメも外したいよね?」。先生もそこはわかっていると思いますよ。 「そうかなあ」。そうですよ。内緒ですが、交際してます。昨日も帰りに抱かれました。