掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「友だちの話なんだけど」と女子高帰りに相談される。親友の友人が、同性を好きになってしまったらしい。「……どう思う、女の子同士って?」。今どき全然ありでしょう。「本気で言ってる?」。もちろんよ。その子の気持ち、何だかわかる。「……じゃあ私とキスできる?」。え、友だちの話なんだよね?

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気になる男子をプールに誘い、ドタキャンされた。「俺もだぜ」と幼なじみが肩を落とす。高校でも評判の巨乳ちゃんを誘ったらしい。見た目で選ぶな。「お前こそ、痩せマッチョに惹かれたくせに」。毒を吐きあい着替えした。「……何だよ?」。水着姿の彼が訊く。知らなかったよ。あんた腹筋割れてんだ❤

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17歳の幼なじみとプールに2人。ともに意中の異性を誘い、直前でドタキャンされた。「あの子の巨乳、見られなくって残念ね」と彼女が笑う。うるせえな。袖にされたの、お前だって同じだろ。毒づきあって着替えをし、彼女の水着姿に息を飲む。「……何よ?」。知らなかったぞ。お前、着痩せするんだな❤

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愛する娘が少年院から戻ってくる。口答え一つせず、昔からいい子だった。15歳のあの夜に、なぜ母の私と夫を刺したかわからない。大丈夫、頑張れば学びの遅れは取り戻せる。スポーツジムにも通わせよう。乱暴な本や動画は遠ざける。友だちもだ。あなたはもっとできるはず。私も夫も再び娘に全てを注ぐ。

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女子少年院を退院する。15歳で父と母を傷つけた。院内では、決まった時間に床に就き、朝は自然と目が覚めた。教官は無理なく学びを進めてくれた。運動会では1位をとって褒められた。「今度は親と仲良くな」。教官の言葉に涙ぐむ。全てを強いられ認めてくれない。牢獄みたいなあの家に、戻りたくない。

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大学の同窓会に彼がいた。高校も私と一緒で、漫研だった。進学後、急に垢抜け、イケメン仕草が腹立たしく、私は距離を置いていた。「ねえ、このネコのアクセ、似合うでしょ?」。ロリ系女子に囁かれ、鼻の下を伸ばしてる。あの野郎! 「……君にはタチが似合うと思うぜ」。うん、まだ内側は百合脳だ。

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大学の同窓会に彼女が来ていた。綺麗に化けて男の視線を集めてやがる。高校も僕らは同じで、漫研だった。大学デビューで眼鏡を外し、以来距離を置かれている。「な、受けるだろ?」。リア充男子に笑い話を聞かされて、彼女は俯き頬を染めた。「……私が好きなの攻めなんだ」。よしまだ中身は腐ってる。

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夏に彼女とキャンプに行き、寝袋を一つ忘れたことに気がついた。テントに敷いて添い寝する。交際7年。相変わらず寝相が悪く、手足がぶつかる。「わざとじゃないよ」。彼女は目覚め小声で詫びた。今度は豊かな胸が背に当たる。……わざとだろ。「そろそろ私、テントより広い2人の家で寝たいんだけど」

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夏休み、彼と2人でキャンプに出掛ける。「うっかりルーを入れ過ぎた」。カレーを煮込む彼が笑う。「あ、うっかりお匙も置いてきた」。そそっかしいなあ。でも作ってくれる優しさが、嬉しいよ。食後、テントに入って彼が呟く。「ごめん、うっかり寝袋一つ忘れてきた」。……うん、それはわざとでしょ?

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夫が家にやってきた。娘に出張土産を渡してる。「またな」と言って、愛人の家に戻っていった。もう5年も別居が続く。お互い愛がないのは確かめた。私は経済的に自立している。娘がいるから寂しくない。それにどんな意味があるのだろう、と自問自答を繰り返し、それでも私は「妻」の立場を手放せない。

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